厚生労働省は22日、介護施設の職員による高齢者への虐待が2019年度に前年度比3・7%増の644件になり、過去最多を更新したと発表した。亡くなったのは4人だった。兵庫県内も過去最多の29件(前年度5件増)を認定した。被害者は35人のうち25人が要介護3以上で、手厚い支援が必要な高齢者に被害が集中していた。(井上 駿)
県によると、虐待を受けた高齢者の28人が女性だった。男性は7人。日常的に介護が必要な要介護3以上は全体の7割を占めた。16年度も同数の29件だった。
また、全体の6割にあたる21人には、日常の生活に支障をきたす程度の認知症の症状があった。
虐待を類型別にみると、暴力を振るうなど身体的虐待が18件で最多。怒鳴ったり、無視したりして精神的苦痛を与える心理的虐待が9件、金品を盗むなどの経済的虐待が9件、必要な介護をしないネグレクト(介護放棄)は3件、性的虐待は1件だった(一部重複あり)。介護施設内で、ナースコールが鳴らないよう細工したり、職員の独断で利用者の身体を拘束したりするケースもあった。
市町別では、神戸市=12件▽明石市=3件▽西宮、赤穂、丹波各市=2件▽姫路、西脇、宝塚、丹波篠山、南あわじ、朝来市、猪名川、太子町=各1件。
虐待が起きる要因として、業務過多によるストレス▽施設側の組織的対応の不備▽介護職員が感情をコントロールできなかった-などの報告が市町からあった。県は再発防止策として、介護事業所の職員に向けた虐待の予防や早期発見の研修に取り組んでいる。
一方、厚労省は虐待の認知件数が増えたことについて、虐待防止への意識が高まり、通報が増えたことなどが背景にあるとみている。自治体への通報件数は3・7%増の2267件だった。