NHK連続テレビ小説「おちょやん」が、中盤に入ってきた。小気味よい物語を支えているのが、落語家桂吉弥の解説だ。登場人物にツッコミやボケを連発し、お茶の間に思わず笑みがこぼれる。初回の冒頭にはなんと黒色の衣をまとって登場し、ヒロイン竹井千代役の杉咲花らを前に口上で幕を開けた。「『千代ちゃん頑張れ、良かったね』と、解説を通じてヒロインを温かく見守り続けたい」と意欲満々だ。
神戸大出身で兵庫県尼崎市在住と兵庫ゆかりの落語家。同局の「バラエティー生活笑百科」でも、テンポあるトークを展開。お家芸を生かして幅広く活躍する。
連続テレビ小説「ちりとてちん」や大河ドラマ「新選組!」などの出演経験はあるが、解説役は初めて。
「年齢層をはじめ多彩な視聴者がいるので、その人らに届く言葉で伝えるのは難しい」と、舞台裏の苦労を話す。「監督らの助言を受けながら、ヒロインの思いに寄り添って感情を入れたり、時には事実だけを淡々と伝えたりと、さまざまな語り方をしている」と工夫を重ねる。
物語を落語で説明したり、無声映画の活弁風に話したりと、いろんな試みをしているともいい、今後が楽しみだ。
同じ兵庫ゆかりのトータス松本=西脇市出身=も、千代の父親・テルヲ役を熱演し、話題を呼ぶ。吉弥はトータスのロックバンド「ウルフルズ」が好きで、ファンクラブに入って何度もライブに足を運んだとか。
内弟子時代、「ガッツだぜ!!」「バンザイ」を聴いて頑張った。今回はトータスと撮影の合間に話ができ、「幸せ」と喜ぶ。一方でトータスが落語好きと聞き、「落語を習いたいと言ってくれた。ぜひ実現したい」と目を輝かせる。
テルヲは千代の足を引っ張るダメおやじだが、吉弥は「人間ってこういう弱い所があるなあと共感できる。その部分を見事に演じている」とたたえる。
作品については、「千代がいろんな出会いを通じ、運をつかんでいく。すてきな成功物語」と感想。コロナ禍で人の絆が希薄になりがちな時代だが、「こんな時期だからこそ、人のつながりっていいなあと思ってもらえるドラマになるよう、少しでも役立ちたい」と抱負を口にした。(金井恒幸)