1人乗りの超小型電気自動車(EV)や自動走行のゴルフカートを配備して、住民や働く人、来訪者らに共同利用してもらう-。そんな次世代交通インフラの実証実験を、近畿経済産業局などが18日、兵庫県西部の播磨科学公園都市(南北4キロ、東西2キロ)で始める。地域の交通の利便性を高めて、人々の回遊を促し、地域の活性化につなげる。(大島光貴)
最寄りの駅やバス停などと店舗や住宅街をきめ細かく結ぶとともに、スマートフォンで路線バスを含めて運行状況の検索や予約ができるサービスも提供する。
EVの充電は駐車中にワイヤレスなどで行う。一連のサービスは「MaaS(マース)」と呼ばれる。今回は、同経産局と兵庫県、神姫バス(同県姫路市)が普及を目指して実施。同様の実験は北海道や九州など全国計5カ所で行う。
播磨科学公園都市は、同県たつの市、同県上郡町、同県佐用町にまたがる山間部で、先端研究を担う大型放射光施設スプリング8や兵庫県立大理学部などが点在。住宅地に約1300人が暮らし、昼間人口は約5900人となる。公共交通機関は、10キロ以上離れたJR相生駅などと結ぶ路線バスがあるが、バス停が限られ、都市内の移動はマイカー頼みとなっている。
実験は31日まで。超小型EVのほか、電動キックボードも提供。EVはバス停に近い3カ所、キックボードはスプリング8構内の4カ所に貸し出しと返却の拠点を設ける。また、自動走行カートは、同都市内のバス路線が集まる「芝生広場」を拠点に住宅地を時速20キロ未満で周回し、9カ所の乗降地点を置く。
実験終了後に利用状況やアンケート結果を集計し、利便性と採算性を両立できる料金体系を探る。オンライン決済機能も検討する。大阪・関西万博がある2025年の実用化を目指す。事業費は3200万円。
神姫バスは、18年から同都市内で自動運転バスの実験を続けてきた。長尾真社長は「交通の幹である路線バスを枝、葉となる手段で補い、住民や来訪者、研究者らの利便性を高める」と話している。