大男が自らの肉体を盾にしてぶつかる-。過酷な格闘技に挑む力士に迫ったドキュメンタリー映画「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」(坂田栄治監督)が、神戸市中央区元町通4の元町映画館で公開されている。名門の境川部屋、高田川部屋に密着し、朝げいこやちゃんこ鍋を囲む素顔を収録。高砂市出身の妙義龍関らへのインタビューを交え、力士という「現代の侍」の姿を浮き彫りにしている。(津谷治英)
早朝の境川部屋。力士たちが土俵で汗と泥にまみれる。背中からは湯気が立ち、息遣いも荒い。本場所映像には、芦屋市出身の大関貴景勝の取り組みも登場。相手と激突した瞬間の木をたたいたような乾いた音が、衝撃を伝える。
妙義龍関の言葉が生々しい。「200キロある人がぶつかってくる。毎日が交通事故です」
撮影は2018年の年末から約半年行われ、元大関豪栄道(現武隈親方)の引退前の葛藤を詳細にとらえる。けがに悩み、治療しながら土俵に向かう姿が痛々しい。なぜ彼らは、危険と背中合わせの角界に身を投じたのか。
歴史解説が理由を教えてくれる。相撲は、血気盛んな男らの力比べとして古代に端を発した。戦国時代には武士の戦闘訓練として発展。よろい、甲に身を包んだ侍の一騎打ちは、時代劇のように一撃で相手を倒すことは難しく、取っ組み合いを経て勝敗を決した。相撲の技は、生き残れるかどうかの生命線だったのだ。
武隈親方が「厳しいことから逃げてばかりいたら、精神的にも強くなれない」と言うように、土俵は武者修行の場といえる。「アスリート」とは違う「力士」の誇りの根底にある武士道の流れに注目し、海外の人も魅了する国技の文化的視点を提示している。
15日まで。104分。元町映画館TEL078・366・2636