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神戸の印象について「必要なものがすべてコンパクトに整頓されているので安心感がある」と話す柄本佑さん=東京都内
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神戸の印象について「必要なものがすべてコンパクトに整頓されているので安心感がある」と話す柄本佑さん=東京都内
安克昌さん
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安克昌さん

 阪神・淡路大震災で被災した住民に寄り添い、がんのため39歳で早世した精神科医・安克昌(あんかつまさ)さんの奮闘を描いたNHKドラマ「心の傷を癒(いや)すということ」が再編集され、劇場版映画として公開される。主演の柄本佑(えもとたすく)さんは「苦しんでいる人をひとりぼっちにしてはいけないという安先生の思想は時代を超える。何が起きても取り残されてしまう人がいない社会になってほしい」と訴える。(井原尚基)

 安さんがモデルの、神戸大付属病院に勤務する安和隆医師を演じた。被災地の惨状を前に無力感を抱きつつも避難所に通い、避難している人々と向き合う。

 2019年に行われた神戸ロケでは、16年に閉校した市立雲雀丘小学校(神戸市長田区雲雀ケ丘1)の体育館に避難所を再現。地元住民ら約300人がエキストラとして集まった。「一人一人の心に寄り添うことを想像したら、ものすごいエネルギーが必要だと驚愕(きょうがく)した」と柄本さんは振り返る。

 1995年の震災当時、8歳の柄本さんは東京にいた。同じ年に東京で起きた地下鉄サリン事件は覚えているが、阪神・淡路大震災のことはまったく記憶がないという。

 ロケ現場では、出演したエキストラが話す震災の記憶に耳を傾けた。火災で周りが見えなかったこと、心の中には絶望しかなかったこと-。95年の神戸を初めてリアルに感じ、イメージできるようになった。

 自分の無力さに打ちのめされながら、諦めずに一人一人と向き合った安医師。「同じ被災者でも、すぐに心を開いてくれる人もいれば、何カ月たっても閉じたままの人もいる。それを、しゃべってもしゃべらなくてもいいよという姿勢を貫いた安先生の辛抱強さも、演じて初めて分かった」という。

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 阪神・淡路大震災後も災害は相次いでいる。コロナ禍で、患者や家族、医療従事者への心ない中傷が横行する。「100人の中で取り残されている人がたった1人だとしても、あそこに1人いるよと気づける視野の広さを持ちたいですね」と、互いの心を思いやれる社会の姿を思い描く。

 震災から26年を経ての映画化だ。「人間って忘れることで前を向けることも多いですが、震災自体は忘れちゃいけない。新たな作品を世に出すことで、震災そのものだけでなく、復興のために力を尽くした人間の底力についても考える機会になる」と話す。

 原案となった安医師の著書「心の傷を癒すということ」はサントリー学芸賞を受けるなど話題となった。テレビ版は昨年1~2月に全4話が放映され、「放送文化基金賞」のテレビドラマ部門で最優秀賞を獲得したほか、柄本さん自身も演技賞を受けた。

 「災害に立ち向かった医師の物語であり、1人の若者の成長を描いた青春映画でもある。前向きな作品だけれど、肩ひじ張らずに見てもらえれば」

 県内ではOSシネマズミント神戸などで2月12日から公開。

【あん・かつまさ】1960年、大阪市生まれ。85年、神戸大医学部卒。神戸大付属病院精神科の医師だった95年、神戸市中央区の自宅で被災。直後から避難所などでカウンセリングや診療活動に従事した。震災を機に広く知られるようになった心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究・治療にも尽力した。神戸市立西市民病院精神・神経科医長に就任した2000年に肝細胞がんが発覚し、同年、3人目の子が生まれた2日後に生涯を閉じた。

<あらすじ>

在日韓国人として生まれた安和隆は、父(石橋凌)に猛反対されながらも精神科医の道を志す。医師となった和隆は、映画館で出会った終子(尾野真千子)と穏やかな家庭を築くが、第1子の誕生後、大地震が神戸を襲う。

    ◇    ◇

■「コロナ禍、兄が生きていたら…」 安克昌さんの弟、成洋さん

 「どきっとするぐらい兄と似ているシーンがある」

 映画「心の傷を癒すということ」のモデルとなった精神科医安克昌さんの弟で会社役員安成洋(あんせいよう)さん(56)=大阪市=は主演の柄本佑さんについてこう話す。「兄がどんな生き方をし、どういう仕事をしたのか50年、百年と残る」と映画化を喜ぶ。

 2018年、NHKドラマの企画当初から、成洋さんや克昌さんの妻ら遺族は考証のためのインタビュー取材に協力、資料も提供した。「ドラマ、映画に遺族の思いを反映させてくれた」と感謝を表す。

 映画では、阪神・淡路大震災時、克昌さんが避難所に通い、被災者の心のケアに取り組んだ姿が丁寧に描かれる。「兄は、神戸大学医学部で中井久夫先生(現名誉教授)と出会い、精神科医に。先生の影響で徹底した現場主義だった。その後の震災時の心のケアにもつながる先駆的な仕事だったと思う」と成洋さん。コロナ禍の今、深刻な悩みを抱える人や自殺者が増えている。「もし兄が生きていたら、そうした人たちに寄り添い、少しでも状況を改善するために動いているだろう」と想像する。

 幼い頃から克昌さんは人の話によく耳を傾けたという。「困ったときはいつも相談した」と成洋さん。克昌さんが亡くなって20年余りたつが「迷ったとき、考えてもらちが明かないとき、兄の本『心の傷を癒すということ』を手に取る。本当に優しく、いい兄でした」。(網 麻子)

【特集ページ】阪神・淡路大震災

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