新型コロナウイルス患者を受け入れるよう要請が強まり、兵庫県内の民間病院も対応に窮している。コロナ病床を数床設けるだけでも、1病棟をつぶさなくてはならない場合が多く、公立・公的病院より規模が小さい民間病院は、看護師らの確保も容易でないためだ。コロナ治療はクラスター(感染者集団)が発生し、外来や入院が止まる恐れもつきまとい、「病院がつぶれる可能性もある」と話す病院長もいる。
兵庫県によると、昨年4月の時点で、県内には348の病院、約6万4千の病床がある。国公立病院や大学病院などの59カ所に対し、民間病院などは289カ所で県内病床の約7割を占める。ただ、県民間病院協会(神戸市中央区)によると、2019年3月末の時点で会員の253病院をみると、200床以上の病院は59カ所で、そのうち28カ所は精神科病院という。
現在、県内で確保されるコロナ病床は756床とされるが、使用率は8割近くに達し、自宅待機者が多数出ている。神戸市立医療センター中央市民病院(全768床)のコロナ専用臨時病棟は36床がほぼ満床で、同市は20日、民間を中心とした46病院でつくる神戸市第二次救急病院協議会に「1床でも2床でも」とコロナ患者の受け入れを要請。県も13日、病床確保の協力を県内全病院に依頼した。
◆
神戸市垂水区の神戸掖済会(えきさいかい)病院(藤久和(ひさかず)院長)は325床と一定の規模があり、昨年秋からコロナ患者を受け入れる。一般患者との分離を徹底しようと、休床中だった49床の1病棟を丸ごと使って、軽症・中等症用の10床を用意した。当初平均4割弱だった病床使用率が急上昇したのは昨年末。1月に入ると、20日までに満床日は15日に上った。
今回の「感染第3波」では、入院患者が高齢化。今月21日に入院する10人は全て60代以上で、7人は後期高齢者。例えば認知症があるコロナ患者は、病室から勝手に出たり、点滴を抜いたりする。食事介助も時間がかかり、各病棟から集めた看護師で仕事を回す。
◆
同市東灘区の甲南医療センター(374床)は、47床の病棟をほぼつぶしてコロナ病床を3床設けた。3床に限ったのはより厳格な院内感染対策のためで、ほかに救急外来の陽性患者に備えた一時隔離病床を2床作り、さらにコロナの「疑い患者」を収容する13床を用意した。患者に対する1回の抗原検査では「偽陰性」の可能性が残り、いったん「疑い」病床に収容。翌日2度目の検査でも陰性となって初めて一般患者として扱うという。
具英成(ぐえいせい)院長は「ここまでするから、院内感染は起きていない。小さな民間病院まで広く薄く病床を確保すると、あちこちでクラスターが出るかもしれない。重要なのは、病院間の役割分担ではないか」と話す。(霍見真一郎)
■受け入れ断念「責められない」県民間病院協会会長西昂氏■
新型コロナウイルス対応病床の「伸びしろ」として期待されている民間病院。兵庫県民間病院協会の西昂(たかし)会長(医療法人康雄会理事長)に、コロナ患者の受け入れで求められる現場の対応や懸念を聞いた。
-コロナ病床を設ける際に民間病院の課題は。
「看護師の確保だ。全84床の私の病院では、コロナ病床を2床作ろうと検討しているが、約70人いる看護師の10人程度をコロナ対応に回さなければならない。一般診療を並行しようにも、張り詰めて頑張れる期間は限度がある。看護師1人がやめたら、せきを切ってやめていく恐れもある」
-世間の目をどう見る。
「感染者が出た県内の病院で、患者を退院させても『コロナを治した病院』ではなく、『コロナがいる病院』と言われた例がある。クラスター(感染者集団)が出れば、衛生管理が悪いという印象を抱く人もいる」
-病床確保への協力は。
「当然するべきだ。ただ、民間病院は赤字になったらおしまい。受け入れができないからといって、その病院を責められない」
【特集】目で見る兵庫県内の感染状況
