朝日放送テレビ(大阪市福島区)が所有する阪神・淡路大震災の映像アーカイブを紹介する本「スマホで見る阪神淡路大震災 災害映像がつむぐ未来への教訓」(西日本出版社)が出版された。各ページに印刷されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、当時の取材映像を閲覧できる。(黒川裕生)
同局は2020年1月、ウェブサイト「激震の記録1995 取材映像アーカイブ」で映像の一般公開を始めた。対象は1995年1月17日の震災発生当日から同年8月23日までに撮影した約38時間分。計約2千の映像の取材地点を地図上に示し、複数の取材日や場面を選べる。
同局で情報番組の気象情報デスクなどを務める木戸崇之さん(48)は「阪神・淡路の映像は放送局の財産であると同時に、社会の財産でもある」と語る。「スマホで見る-」はそこから、発生の瞬間▽木造住宅が多数倒壊▽スーパーに大行列-など357本を抜粋。文章の解説も添えた。
避難所で汚物があふれて足の踏み場もないトイレを捉えた映像では、取材スタッフを案内した避難所の男性が「こんなところで用を足せというのは無理。下の階から順番に掃除してはいるけど、上の階まで手が回らない」とぼやく。
「災害時はトイレが大変だということが、一発で理解できるはず。アーカイブには、このような生きた教訓が他にも山ほど詰まっている」と木戸さんは言う。
95年4月に入社した木戸さんは報道記者として、阪神・淡路をはじめ各地の被災地を取材。17年には、テレビに視聴地域の特別警報や避難情報などを強制表示するシステムを国内の放送局で初めて導入するなど、放送人の立場から防災に尽力してきた。
阪神・淡路当時、400年前の1596年に関西地方で起きた慶長伏見地震は教訓として伝わっていなかった。「災害の経験は意外と伝わらないということを前提に、未来につなぐには何が必要か。その答えが、アーカイブの公開とこの本の出版だった」と木戸さん。「今の目で、細かいところまで見てほしい」
A5判、220ページ。税別1500円。全国の書店で発売中。
