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日本サステイナブルコミュニティ協会副代表理事、シン・エナジー社長の乾正博さん=神戸市中央区(撮影・斎藤雅志)
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日本サステイナブルコミュニティ協会副代表理事、シン・エナジー社長の乾正博さん=神戸市中央区(撮影・斎藤雅志)

 新型コロナ禍と地球温暖化という二つの危機を克服する「グリーンリカバリー(緑の回復)」に向けた動きが世界で進んでいる。その柱となる自然エネルギーと分散型社会への転換で、注目されるのが森林の有効活用だ。日本は先進国有数の森林大国でありながら、木質を燃やすバイオマス発電の燃料の7割を輸入が占めるとされ、疑問の声が上がっている。適切な木材の伐採は、気候変動で多発する風水害に強い森づくりにも欠かせない。日本サステイナブルコミュニティ協会の副代表理事で、エネルギーの地産地消による循環型社会を目指す新電力会社「シン・エナジー」(神戸市中央区)社長の乾正博さんに、現状を聞いた。(辻本一好)

 -協会は長く課題となっている地方創生を、豊富な森林など地域エネルギー資源から実現する目標を掲げています。発足の経緯は?

 「例えばバイオマスなら、ボイラー、林業系、廃棄物系というように、それぞれ業界として働き掛ける団体は多いと思います。だけど『地方』目線の活動団体がないよね、と親しい企業の人たちと話したのがきっかけでした。そこで同志を集め、自治体や研究者も巻き込んで、『持続可能な地域』を主眼にやっていこうと盛り上がり、設立に至りました」

 -昨年は、森林資源の熱・発電利用の可能性をテーマとした計5回のセミナーをオンラインで開きました。その狙いは?

 「林業や自治体、発電など森林に関わる現場の人たちを呼んで話を聞き、経済と地方の視点からバイオマスの現状について議論したいと思いました。それで、まず『里山資本主義』や『デフレの正体』の著作で知られる藻谷浩介さん(日本総合研究所主席研究員)にコーディネーターをお願いしました」

 「藻谷さんは、最初に日本の貿易収支のデータを示して、化石燃料費として膨大なお金が中東など国外に流出している現状を取り上げました。エネルギー収支では、全国の市町村のほとんどが赤字です。こうした現状についてもう少し考えた方がいいのではないか、ということです」

 -乾さん自身は、バイオマス発電で海外産の燃料が増えている点などを課題として指摘しました。自国の豊富な森林資源を有効利用していないのは問題ですね。

 「環境価値や社会貢献で測れば、バイオマス事業は何点の点数がつけられるか。そうした問い掛けです。環境の視点で見れば、せっかく木にため込んだ炭素を燃やすのですから、できるだけ効率よくエネルギーに利用すべきです。また、地域の観点で見ると、木を上手に使えば山の管理、地域のエネルギーの安全保障に役立つと言えます。ところが、海外から持って来たものを燃やすと、地域に役立つ事業という最低限のことすら、守れないことになります」

 「先日、米国のNGO(非政府組織)が日本政府に、『アメリカの木から作った木質ペレット(粒状の原料)を再生可能エネルギーと認めないで』との要望書を提出したというニュースが報じられました。また、日本に燃料として大量のPKS(ヤシ殻)を輸出しているマレーシアやインドネシアに対して、欧州から批判の声が上がっています」

 -木質バイオマス事業では、林業とエネルギーをどうつなぐかも大きな課題となっています。

 「日本では戦後、木や森林というと『建築』に結びつける目線が強くなりましたが、戦前は薪や炭として活用していました。エネルギーとして木を利用する営みをやめてしまい、化石燃料にひたる暮らしを続けた結果、木を使いながら更新する森林のサイクルがうまく循環しなくなってしまった。地球単位で環境を考えるためにも、これから地域の森とどうつきあっていくのか、という問題に向き合う必要があります」

 「オーストリアでは1970年代のオイルショックを契機に、木材の燃料化と無駄なく使い切る熱利用の技術開発を続けてきました。今ではボイラーが27万台もあります。一方、日本は森林面積が6倍あるのにようやく2千台です。また、欧州では森林資源を熱供給に生かすボイラーが住宅街のそばに整備されている。技術的にもまだ差があります」

 -東日本大震災直後は、日本でも自然エネルギーの技術開発が活発でしたが、最近はバイオマスに限らず、技術が育っていません。政策を強化する国々との格差は広がるばかりです。

 「バイオマス事業をしていると、成長に50年かかる森林視点の『ものさし』で考えるようになるので、1、2年の短期の視点で見る経済や国の政策とのギャップを感じます。ベースに森林など自然資本があり、それらを循環させる中で暮らしも経済も持続可能になる-。地球温暖化が進む中、そうした考え方が重視される時代になっていますが、日本は後ずさりしながらやっているうちに、太陽光も風力もバイオマスも後進国になってしまったのではないでしょうか」

 -今も自然エネルギーは難しいという声があります。

 「世界ではそうした議論はもうありません。グリーンリカバリー、グリーンニューディールなど、自然エネルギーへの転換で世界は動いてます。トランプさんは地球温暖化対策のパリ協定に背を向けましたが、バイデンさんが大統領になって、米国も本格的に動きだすでしょう。今のままでは日本だけが置き去りになってしまう」

 「米国では、温暖化に危機感を持つ若者たちの活動が、バイデンさんの意識を大きく変えたと言われています。日本の政治もわれわれも、もう変わらないと。企業も地域も前のめりでやっていくことが必要。そうした中から未来のデザインや技術が生まれると思います」

 -グリーンリカバリーで森林資源を回復させる主役は、地域だと言われています。

 「コロナは大変ですが、デジタル化で地方が情報共有できる状況が生まれています。以前は今回のようなセミナーは東京で開かれるので、遠方の人は参加しにくい面がありました。今は森林大国の大きな可能性を持つ地方の人が、自分のこととして、いろんな発見をしてもらう機会を設けやすくなりました。エネルギーの力がコミュニティーパワー(地域の力)となる。そんな地域型の資本主義の形を考えていきたいです」

【いぬい・まさひろ】1971年神戸市生まれ。93年、洸陽電機エンジニアリング(現シン・エナジー株式会社)入社。2014年に副社長、15年から社長。日本サステイナブルコミュニティ協会副代表理事。

<データ>日本サステイナブルコミュニティ協会 2018年設立。会長は東京大学公共政策大学院客員教授の増田寛也さん。20年に勉強会的討論ウェビナー「地域の可能性をエネルギーから考察する~バイオマス編」を開催。

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