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豊岡市が作成したジェンダーギャップ解消を呼び掛けるパンフレット
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豊岡市が作成したジェンダーギャップ解消を呼び掛けるパンフレット
ジェンダーギャップ解消に向けた提言書を受け取る中貝宗治市長(右)=豊岡市役所
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ジェンダーギャップ解消に向けた提言書を受け取る中貝宗治市長(右)=豊岡市役所
事業者の管理職向けに開かれた演劇ワークショップ=2019年9月、豊岡市中央町
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事業者の管理職向けに開かれた演劇ワークショップ=2019年9月、豊岡市中央町

 東京や京阪神といった都市部へ進学などで流出した若い女性が再び地元に戻らなければ、人口減少がさらに加速し、地域を維持できない-。強い危機感を背景に、兵庫県の北端にある豊岡市が「ジェンダーギャップ(男女の格差)」の解消に取り組んでいる。市役所や地元企業が一体となり、女性が働きやすい環境づくりを推進。2021年度からは、女性に選ばれる地域づくりを目指し、家庭や地域コミュニティーにも取り組みへの参画を促す。8日は女性の権利向上を目指し、国連が定めた「国際女性デー」。自治体が、ジェンダー不平等に向き合い、地域の在り方を変えようとする試みとして注目される。

■地域から女性がいなくなる

 「次世代により良い未来を引き継ぐには、男性中心の社会を見直すことが不可欠」

 1月、市民らでつくる「戦略会議」が、提言書を中貝宗治市長に提出した。地域から女性がいなくなることを避けるために、社会や家庭で男女が共に意思や方針の決定に参画し、ケアを分かち合える地域づくりなどを目指す内容。中貝市長は「条例化に向けて検討する」と応じた。

 同会議は男女比半々。有識者や経営者、教員、育児中の人、若手会社員、地域団体の代表者ら多様な立場の10人が、市の諮問を受け、昨秋から協議してきた。

 市が男女の格差解消に動いたのは18年。地域創生でU・Iターン率を高める施策を考えるうち、市外に流れた10代の若者人口を20代の流入でどれだけ補えたかを見る「若者回復率」が男性の約52%に対し、女性は27%(15年国勢調査)しかないと分かったからだ。

■補助的な仕事ばかり、魅力ない

 女性が集まらなければ、地域創生はおろか、地域を維持できない。市は、ジェンダーギャップの解消を最重要課題に据えた。さらに現状を分析すると、大きな要因が見えてきた。

 同市では、雇用されている男性の8割以上が正規雇用だが、女性は5割以上が非正規。51~60歳の平均給与は男性が480万円、女性は251万円。女性の育児休業取得率は全国平均を大きく下回り、離職する女性が多いとみられる。

 また、市内の自治会に当たる360の行政区の区長は全て男性。市議会は23人のうち女性は2人だけだ。

 都市部では、女性の採用や職場への定着のため労働条件の男女差が縮む方向だが、同市では今も女性が職場や家庭で補助的な役割を担うことが多く、生活拠点とする魅力が低いと結論づけた。

■女性も働きやすい職場環境

 市はまず趣旨に賛同する経営者らを集め、女性も働きやすい職場環境を考える推進協議会を設けた。現在、約50社が加入。研修で互いの取り組みを共有し、全社員の意識調査をして経営者にフィードバックし改善を促すこともある。

 木製ハンガーを専門につくる「中田工芸」の中田修平社長(42)は自ら育児休暇を取得。子どもの行事などに活用する「ペアレント休暇」も新設した。「当初はトップが休んで大丈夫かと不安だったが、社員も取得しやすくなり、休もうとすることで業務の効率化にもつながった」と話す。

 市役所も19年から、リーダーシップや実践力強化などの研修を実施。若手から管理職まで全世代で意識改革を進める。

 中堅の女性職員を対象にした研修では、自分たちで問題点を考察し、男女で経験した担当業務が異なることが分かった。ある男女2人が約20年間に担当した職務を比較したところ、男性は企画や財務、施設管理など7種類を経験していたが、女性は部署を異動しても住民サービスや庶務の2種類だけだったという。

 市ワークイノベーション推進室の岸本京子参事は「人事担当が意図的に配置したわけではなく、その都度の判断で無意識に窓口は女性などと思ったり、育児中で良かれと思っていたりしたことが積み重なって不均衡な結果になったのだろう」と話す。

■地域や家庭へ、一歩踏み込んだ取り組みに

 中貝市長は今月8日の国際女性デーに合わせて発表した声明で、ジェンダーギャップについて「理念だけの問題ではなく、まちの存続に関わる極めてリアルな課題」と訴えた。

 企業と市役所が進めてきた取り組みを、地域や家庭にも広げようと、3月下旬には提言書を基に数値目標を盛り込んだ戦略を策定する。新年度からは多様な女性が集まる会議の設置や、子育て世帯の男女の家事・育児時間に関する調査などを行う予定だ。

 「これまで女性には申し訳ないことをしてきた。長年染みついた意識や慣習を変えることでハレーションも起こるだろうが、地域が生き残りたいという思いはみな同じ。着実に進めていきたい」とも話す。 

■演じることで差別を考える

 どうすれば意識を変えられるのか。19年に東京から移住してきた劇作家平田オリザさんの主宰劇団「青年団」も協力。演劇の手法を使ったワークショップが効果を上げている。

 ある管理職向けの講座では、市内に開業する観光商業施設の準備室のスタッフを増やす設定で、性的少数者(LGBT)やがん経験者らさまざまな背景を持つ8人の架空の人物の書類選考を、参加者が応募者と面接官になりきって演じた。

 人物設定を考えた劇団員は「関わったことのないような人でも、演じることで、どのような差別を受けてきたかなどを真剣に考える機会になる。育児中の従業員への対応など、他の問題の可能性にも気付ける」と説明する。

 参加者が高齢の男性や子育て中の女性などを演じながら、あるNPO法人の理事長にふさわしい人物を決める講座もあった。

■全国の自治体の手本に

 「女性活躍」「男女共同参画」を掲げる自治体は数多くあるが、豊岡市は、家庭や職場、地域社会での男女間の格差の根底にあるのが「ジェンダーの問題である」と認識し、人々の意識や社会に深く内面化、構造化したジェンダー不平等を解消しようと試みている。

 関西学院大の大崎麻子客員教授(ジェンダー論)は「性別役割分業の構造を変えないまま、女性の仕事と家庭の両立支援などを打ち出しても、根本的な問題は変わらない。そこに切り込む豊岡市の取り組みがうまく進み、全国の自治体のお手本となることを期待する」と話す。(石川 翠)

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