出場者が巨大アスレチックの攻略を目指すテレビの人気長寿番組「SASUKE(サスケ)」(TBS系)に長年出場し、「ミスターサスケ」の愛称で呼ばれる山田勝己さん(55)=兵庫県播磨町。番組内では鍛えた肉体と諦めない姿勢で知られるが、実は、19日開幕の「第93回選抜高校野球大会」に初出場する県立東播磨高校(同県稲美町)野球部の出身だ。「野球部での鍛錬が、サスケへの挑戦を続ける原動力になった」と話し、大舞台に立つ後輩たちにエールを送る。(千葉翔大)
山田さんは少年時代、阪神タイガースの掛布雅之さん(65)に憧れ、小学2年で地元のソフトボールチームに入った。中学では野球部に入るつもりだったが、強力な勧誘があった陸上部に入部したという。
その後、東播磨高校に8期生として進学。「今度こそ、野球部に入る」と心に決め、合格発表の翌日にはジャージー姿で野球部の練習に押し掛けたという。幼い頃から身体能力に優れ、ソフトボールには親しんでいたが、野球は素人。1年時は遠征試合に帯同してもらえず、学校に残って練習することも多かった。
今も忘れられない体験がある。高校1年の11月。オフシーズン直前の練習試合で山田さんは代打として打席に入った。「9回裏ツーアウトだった。二つの直球で簡単に追い込まれ、そのまま3球三振。バットを振るどころか脚が震えていた」と山田さん。悔しさのあまり、学校に戻る道中は涙が止まらなかったという。
初めて味わった敗北の苦さ。他校との練習試合が解禁される翌年3月まで、練習の虫となった。通常の部活動に加え、朝練習などに励み、1日1500本のスイングを自身に課した。時には、授業後の学級活動を抜け出して打撃練習をしたことも。その結果、解禁直後の練習試合では2打席連続本塁打を放ち、チームの主軸に定着したという。
サスケには、1997年の第1回大会から出場。99年の第3回大会では、初めて最終ステージに進んだ。30秒以内で地上15メートルの綱登りのクリアを目指したが、寸前で時間切れ。全ステージ制覇を目指し、自宅近くにサスケを模したトレーニング用のセットを造ったり、「俺にはサスケしかないんです」との名言を残したりし、番組の顔となった。
現在は鉄工所を経営しながら、サスケの完全制覇を目指す若者たちを指導している。自身が果たせなかった夢は、後進に託した。
「高校時代の悔しい思い出があったから、勝負への執着心が生まれた」と山田さん。3年前を最後に、母校の試合は観戦できていないが、「(昨年の)秋の県大会も準優勝。実力は間違いない」と話し、「ぜひ笑顔で爽やかなプレーを見せてほしい」と期待する。
