兵庫県たつの市の古刹で、浄土宗の宗祖・法然ゆかりとされる浄運寺(同市御津町室津)の本尊・阿弥陀如来像に、胎内仏があることが9日、分かった。多摩美術大(東京)の青木淳教授(55)=日本美術史・宗教史=がエックス線撮影で確認し、写真を公表した。本尊の如来像は快慶の流れをくむ仏師が鎌倉中期に彫り、胎内仏は江戸期の修理時に加えられたとみられる。
青木教授は法然と快慶の関連を研究するため、2017年から非破壊検査の専門企業などと合同で各地の寺を調査。浄運寺では18年3月に本尊の如来像(高さ78・8センチ)をエックス線撮影し、腹部から足元にかけての空洞に、高さ約14センチの阿弥陀如来像らしいシルエットが浮かび上がった。
胎内仏について、青木教授は「画像からも優しい顔つきがうかがえる」と指摘。近くには球形の物体があり、「球は子どものおもちゃの鞠を想像させる」と話す。本尊の後ろにある装飾「光背」には江戸中期の享保年間に修理したことを示す銘があり、胎内仏の制作時期も面長な特徴から江戸時代と推定できるという。
浄運寺があるたつの市御津町の室津地区は、古代から天然の良港として栄えた。「法然上人絵伝」には、法然が讃岐へ配流された際に室津に立ち寄り、遊女「友君」を教化した場面が描かれている。
青木教授は「仏教の女人禁制が強かった時代から、浄運寺は女性の信仰の対象となり、胎内仏を入れた江戸時代も信仰が続いていたのでは」と推測。「(胎内仏は)法然が遊女に教えを説いた寺の由来を思わせ興味深い」としている。
本尊の拝観は要相談。浄運寺TEL079・324・0030
(直江 純)











