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自主避難者宅で話に耳を傾ける澤田和恵さん=神戸市内
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自主避難者宅で話に耳を傾ける澤田和恵さん=神戸市内
「イロイロ」の定期会合に参加する牧秀一さん(中央)=大阪府茨木市
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「イロイロ」の定期会合に参加する牧秀一さん(中央)=大阪府茨木市

 東日本大震災の福島第1原発事故で、放射性物質から逃れようと全国各地へ移住した自主避難者が、事故から10年を経ても厳しい環境に身を置いている。関西最大規模の支援団体「災害とくらしの相談室iroiro(イロイロ)」(大阪府茨木市)は「心の命綱」になろうと、兵庫県内の避難者宅へ訪問支援を展開。昨年6月からは、阪神・淡路大震災の被災者支援に長年携わってきた牧秀一さん(70)も活動に加わった。(伊田雄馬)

 2月下旬の朝、イロイロで活動する澤田和恵さん(53)は神戸市内で自主避難を続ける女性(54)のアパートを訪れた。訪問は2年前からだ。震災発生時、女性は東京に住んでいたが、放射性物質の健康被害を恐れ、家族3人で兵庫へ移った。

 「まさか自分がここまで追い詰められるとは…」

 女性は伏し目がちにそう話す。最初に移り住んだ県内のある市では、避難者のコミュニティーをつくろうとするなど活動的だったという。だが、夫と離婚し、神戸市に転居。息子と2人で暮らし始めた。

 昨年春、大学に進んだ息子が家を離れてから次第に気がふさぎがちになり、昨年12月にうつ病と診断されたという。薬の副作用で食事がのどを通らない時、助けを求められる唯一の存在が澤田さんだった。

 今も週に1度、軽食や飲み物を買ってきてくれる澤田さんに「人間不信に陥っていた。澤田さんがいなければ人生を諦めていたかも」と感謝する。

 澤田さんは自身が東日本大震災の被災地、宮城県石巻市出身で、津波で住む家を失った。「外面的には普通に暮らしているようでも、自主避難者はさまざまな悩みを抱えている」と話し、同じ被災者の目線で困りごとを引き出そうと心がけている。

 兵庫県によると、放射線の影響を危惧し、国が指定する避難区域の外から自主的に移住した避難者は、兵庫県内で約280世帯740人(1月22日時点)。

 2016年に設立されたイロイロは福島県が行う帰還事業の受け皿として、同県で催した交流会に避難者を招いた。関西一円の約100世帯とつながり、うち「必要性が高い」と判断した約10世帯を定期的に訪問。昨年6月には“助っ人”として牧さんが加わった。

 NPO法人「よろず相談室」(神戸市東灘区)の理事長を今春にも退く牧さんは、イロイロの誘いを受けて加入。今年1月から週に2回ほど自主避難者の訪問に出向いている。イロイロの片岡誠さん(63)は「人の話を聞くことに関して、牧さんの右に出る人はいない」と期待する。

 夜間定時制高校の教壇に立ってきた牧さんは「母子での避難が多い自主避難者は、親子間での悩みごとを抱えがち。教師の経験を生かし、悩みに耳を傾けていきたい」と話す。

 

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