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「自分の意思で自分の人生を決定できることに年々、楽しさを感じている」と話す吉田美香八段=神戸市東灘区
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「自分の意思で自分の人生を決定できることに年々、楽しさを感じている」と話す吉田美香八段=神戸市東灘区
神戸新聞NEXT
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 囲碁の吉田美香八段(50)=神戸市東灘区=が、国内の女性棋士では初となる公式戦通算700勝を達成した。2人の娘を育てながら一つずつ積み重ねてきた勝ち星。「必死に頑張ってきたんやな」とプロ棋士としての35年間を振り返り、「次は女性初の九段昇段を目指したい」と新たな目標を定める。(井原尚基)

 吉田八段は1971年、大阪市生まれ。86年にプロ入りし、2003年、八段に昇段した。1993年から女流本因坊4連覇を果たしたほか、NHK囲碁講座の講師を務めるなど幅広い場で活躍してきた。会社員の男性と結婚し、高1と中1の2女を育てている。

 昨年秋、テレビ収録がある棋戦に出場した際、ふと解説者用の資料が目に入った。自身の通算勝ち星が「694」と書かれているのを見て「もうちょっとで700勝や」と気がついた。

 700勝目は2月に打たれた女流本因坊戦予選決勝の水野弘美五段戦。「序盤で楽な態勢になった」といい、黒番中押し勝ちを収めた。快挙が報道されると、囲碁でつながりのある知人だけでなく、普段は囲碁の話をしないママ友らからも祝福を受けたという。

 「タイトルを取るほうが偉いのは間違いないので、感慨深いというわけではない」と率直な感想を語りつつ「後から続く女性棋士に対して一つの目安を示せたという意味では、それなりの価値はあるのだろう」と話す。

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 「布石はオーソドックスで、力碁ではなく寄せも弱い。バランスの良し悪しは分からないが、ときどき突拍子のない着想が出る」と自身の棋風を語る。結城聡九段=神戸市西区=に命名された「思いつきの碁」という名が「その通りやと思った」と気に入っている。

 「充実している棋士の棋譜を並べるのが楽しい」といい、日常的な勉強では朴廷桓(パクジョンファン)九段(韓国)や柯潔九段(中国)の棋譜を並べることが多い。プロ間では人工知能(AI)を使った研究が普及しているが「AIの発想にない手を打つと評価値が下がると聞き、頼らないにようにしている」という。

 育児が大変な時期に、棋戦の対局の間隔を開けてもらったり、アマチュア指導普及のイベントを減らしたりと、働き方を選べる環境に身を置けたことに感謝している。育児を優先したため勉強時間が減り「1局も勝てないのではないか」という時期もあったが「勝てないなら勝てないなりに次は頑張ろう」という気持ちで乗り越えてきた。

 近年は、藤沢里菜女流本因坊や上野愛咲美女流棋聖など、東京を拠点としている女性棋士の活躍が目立つ。「関西の女性棋士が伸びていないのは残念。さまざまな要因があるんでしょうけど、結局は本人。誰かが一念発起する可能性は常にあるから、暗い気持ちにはなりません」と前向きにとらえる。

 新たな目標は、まだ女性に達成した棋士がいない「九段」。七大棋戦など、男性を含む全棋士参加棋戦で八段昇段後、200勝することが条件で、残り67勝(19日現在)。「結果が出ないことにも苦しみながら、今までとは異なる世界を盤上で見るのを楽しみにしていきたい」と明るく語る。

 

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