兵庫県尼崎市が22日、暴力団組幹部宅の買い取りを表明した。組関係者に公金を支払うという異例の決断には、組事務所ではない関連施設を規制する法令がなく、暴力団同士の抗争に収束が見えない中、「住民の安全を最優先しなければならない」とする差し迫った状況があった。
昨年11月の民家への発砲事件を受け、尼崎市は兵庫県警に対し、組事務所以外への施設も規制を強化するよう要望。民家は「関連施設」となり、暴力団対策法などで規制できる対象に認定されていないためだった。
一方で民家はかつて組事務所として使われており、「抗争の火種となる恐れは今後も捨てきれない」との危惧は根強かった。
同市によると、暴力団関係者の不動産取引は、業界の暴力団排除が進んで民間の仲介が難しくなっている。稲村和美市長は会見で「放置すれば、現場はまた新たな反社会的勢力の拠点になる恐れがある」と買い取りの意義を強調した。
市は今年1月に兵庫県警を通じ、所有者が売却の意向を持っているとの情報を得て直接交渉を続けてきた。暴力団追放運動に詳しい兵庫県弁護士会の垣添誠雄弁護士は「法規制の対象外の物件を市が買い取るのは勇気があること。現行法の限界自体が問題だが、各地の暴力団排除運動の模範となる」としている。











