新型コロナウイルスの感染拡大を受け、兵庫県が飲食店の時短を要請する地域に中播磨、東播、北阪神の14市町が加わる。わずか3週間で元通りという事態にも、自治体関係者は「感染拡大防止にはやむを得ない」と一定の理解を示す。一方、巻き返しを図ろうとしていた飲食店からは悔しさと、時短頼みの政策への疑念が入り交じった。
■厳しい資金繰り
明石駅前のカレー店「ディープ・マハル」は今月、深夜営業を再開。客足が徐々に戻りつつあり、店主の男性(45)は「安心していたところだったのに」と声を落とす。
個人商店の家賃貸与など市独自の支援に取り組む泉房穂市長は「飲食店などで働くひとり親らが再び経済的に苦しくなる」と懸念。「経済的なしわ寄せが弱者だけに行かないよう、県もさらなる生活支援策を検討してほしい」と注文する。
JR加古川駅近くのダイニングバー「Dedible(デディブル)」のオーナー(39)は「盛り返そうと思っていたのに」と唇をかむ。「第3波の協力金もまだ入ってないし、資金繰りが厳しい」と不安ものぞかせる。
加古川市などで和食ダイニングなどを展開する「入船」(加古川市加古川町北在家)の担当者は「店舗規模が大きいと協力金だけでは補いきれないが、客の安全のために応じないわけにはいかない」。
同市健康課の藤田耕平副課長は「影響の大きい飲食店や市民にお願いするのはつらいが、医療体制の逼迫(ひっぱく)は防がないといけない」と苦しい胸の内を明かす。
■変異株が拡大
英国型の変異株感染者が相次いで確認されている姫路市。姫路城三の丸広場の桜はほぼ満開だが、管理事務所は日没後に飲食を伴う花見を控えるよう呼び掛ける。同市危機管理室も「花見シーズンで気が緩んでしまう。申し訳ないが、『第4波』防止に協力を」と訴える。
「神戸市などと比べ、感染者数が急増した実感はあまりない」と首をかしげるのは、播磨最大の繁華街・魚町地区でレストランバーを営む男性(50)。営業時間を昼にも広げたため時短の影響は限定的とみるが「解除したら元通りになるのでは。時短要請を『乱発』しているようだ」との疑念もぬぐえない。
一方で、感染者が4人しか確認されていない神河町も時短区域に。同町の日和(ひより)哲朗総務課長は「住民の生活圏や行動範囲を考えた上でのこと。制限範囲を決めるのは苦慮しただろう」と難しい判断に理解を示す。
飲食店支援にと、持ち帰り弁当の利用を町職員に呼び掛ける同町。日和課長は「早い収束を願うばかり」と語った。(まとめ・小西隆久)