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1974年に図書館としての利用が開始された加古川図書館。加古川町公会堂だった頃は音楽会などが催され、地域の文化拠点だった=加古川市加古川町木村(撮影・笠原次郎)
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1974年に図書館としての利用が開始された加古川図書館。加古川町公会堂だった頃は音楽会などが催され、地域の文化拠点だった=加古川市加古川町木村(撮影・笠原次郎)
建物北側にある松の下で、三島が徴兵検査を受けたとされる=加古川市加古川町木村(撮影・笠原次郎)
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建物北側にある松の下で、三島が徴兵検査を受けたとされる=加古川市加古川町木村(撮影・笠原次郎)
アールデコ調のステンドグラスで飾られた正面窓。幻想的な空間を演出している=加古川市加古川町木村(撮影・笠原次郎)
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アールデコ調のステンドグラスで飾られた正面窓。幻想的な空間を演出している=加古川市加古川町木村(撮影・笠原次郎)
三島由紀夫
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三島由紀夫

 作家の三島由紀夫が徴兵検査を受けた場所として知られる加古川市立加古川図書館(兵庫県加古川市加古川町木村)が、存廃の岐路に立っている。築85年を過ぎた建物は老朽化して雨漏りがあり、耐震診断もしていない。改修には多額の費用が見込まれ、10月のJR加古川駅前への図書館移転後について、市は「解体も選択肢」とする。兵庫県景観形成重要建造物に指定されており、市民からは保存、活用を求める声も上がっている。(斉藤正志)

 兵庫県建築士会の初代会長を務めた建築家、置塩章(おしおあきら)の設計で、1935(昭和10)年に加古川町公会堂として建築された。

 鉄筋コンクリート造り2階建て。正面の半円形の窓を幾何学模様のステンドグラスで飾るなど、アールデコ調を基調とした近代的な装飾を多用している。

 三島が徴兵検査を受けたのは、19歳だった44(同19)年5月とされる。祖父が旧志方村(現加古川市志方町)出身で、三島の本籍地は同村だった。東京から加古川を訪れた時のことを、自伝的小説「仮面の告白」に、こう記している。

 「本籍地の田舎の隊で検査をうけた方がひよわさが目立って採られないですむかもしれないという父の入知恵(いれぢえ)で、私は近畿地方の本籍地のH県で検査をうけていた」

 検査では米俵を持ち上げられなかったが、「結果は第二乙種合格」。その後、召集され再び加古川を訪れるが、入隊検査で風邪を「肺浸潤」と誤診され、即日帰郷を命じられたことが書かれている。

 95年には作家の猪瀬直樹さんが著書「ペルソナ 三島由紀夫伝」で、同公会堂の松の下で一緒に検査を受けた男性の証言を紹介。松は建物北側に現存しており、この著書がきっかけで三島ファンが同図書館を訪れるようになったという。

 老朽化が進み、耐震性がない可能性があるため、加古川市は2019年度、図書館を移転させる方針を決定。コンサルティング会社を通じて建物の民間活用を探ったが、10億円規模の改修費用が要因となり、興味を示す事業者はいなかったという。

 図書館移転後は当面、書庫として使う。岡田康裕市長は「解体を決めているわけではない」としながら、「交通の便も悪く、億単位の費用をかけて市民が使えるようにするのは難しい。市民と話しながら今後の方針を考えたい」とする。

 15年には、日本建築学会近畿支部が保存、活用を求める要望書を岡田市長に提出している。同市の男性(76)は「市内で唯一残る歴史的な公共施設。壊してしまうと後戻りできない。大切な財産として絶対に保存してほしい」と求めている。

■歴史的建造物 解体方針相次ぐ

 歴史的な建造物の解体方針が示されるケースは近年、各地で相次いでいる。

 1926(大正15)年に建築された旧宝塚ホテル(兵庫県宝塚市梅野町)は、築90年を超えて耐震化が必要となり、阪急電鉄が2017年に新築移転計画を発表。阪神間モダニズムを象徴し、宝塚歌劇ファンにも親しまれてきたが、昨年11月に解体が始まっている。

 旧宝塚ホテルは05年度に兵庫県景観形成重要建造物に指定されており、これまでに指定された建造物101件のうち、解体による初の解除となる見込み。

 1900(明治33)年建築で、兵庫県尼崎市東本町にあるユニチカ記念館(旧尼崎紡績本社事務所)も、2007年度に同建造物に指定されたが、所有する繊維大手「ユニチカ」は解体する方向で検討。老朽化で耐震化に多額の費用がかかることが要因となっている。

 歴史的建造物の保存、修復が専門の後藤治・工学院大教授は「歴史的な建造物は地域の個性ある風景をつくっている。解体して新築すれば、全国各地と同じようなものになる。住民の郷土への誇りは古い建造物からしか得られず、自治体が公金を投じるのは意味ある投資になる」と話す。(斉藤正志)

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