新型コロナウイルスのかつてない急速な感染拡大のため、兵庫県が重症者の受け入れ拠点に位置付けている3病院の重症病床使用率が97%になった。重症化しやすいとも言われる変異株の影響が大きいとみられ、3病院の重症病床にいる2人に1人が人工呼吸器を装着。関係者は「病床は赤信号だ」と危機感をあらわにする。(霍見真一郎)
県立加古川医療センター(加古川市)、神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)、県立尼崎総合医療センター(尼崎市)の3病院。16日朝現在で使用可能な重症病床計60床のうち58床が埋まっている。
加古川医療センターでは15日から、重症者専用病棟を運用。同病院幹部によると、同病棟は12床あるが、マンパワーが足りず8床しか使えない状態。16日朝現在は満床で、全員が人工呼吸器をつけている。
ほかに重症者病床を8床設けているが、2床は隔離解除後も入院が必要な人に使うため6床しかなく、うち5床は既に埋まっているという。同幹部は「医療崩壊に相当する」と話した。
中央市民病院は16日朝現在、臨時病棟だけでなく、緊急措置で使う本館の感染症病床を含む計46床が満床。臨時病棟(36床)では15人が人工呼吸器を使う。
同病院関係者は「臨時病棟に40代、50代が計7人おり、4人は人工呼吸器を使っている。従来株は発症から1週間後に悪化していたが、変異株は3日程度」と指摘。「受け入れの可否は組織的に判断し、現場の医師は目の前の患者に集中している」と極限で勤務が続く状況を語った。
県立尼崎総合医療センターでも、16日朝現在で重症病床10床のうち9床が埋まり、5人が人工呼吸器を使用。酸素が必要な中等症でも宿泊療養や自宅療養になる人が増え、1、2日早く治療を始めていれば重症化を防げた若年層もいるという。同病院幹部は「医療は万能でも無尽蔵でもないことを重く受け止め、家族以外の人と話す際、いついかなるときも必ずマスクをしてほしい」と強く求めた。
こうした状況を受け、3病院以外の医療機関も緊急対応を迫られている。
神戸市内の民間病院院長は「救急患者にコロナが判明した場合に備え、コロナ病床を1床は残しておかないといけない」と説明。県内郡部の病院関係者は「年末年始は阪神地域などの患者を受け入れていたが、今は地元の患者でさえ入れない」とする。
県の病床調整に携わる救急関係者は「絶望感に近い感覚。でも立ちすくむわけにはいかない」と話した。
一方、県内にはほかにも神戸大病院や兵庫医科大病院など重症病床を設けている医療機関があり、多くで使用率は上がっている。
