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木綿の売買に使われた「今市札」(「高砂市史伊保篇」より)
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木綿の売買に使われた「今市札」(「高砂市史伊保篇」より)
旧渋沢邸跡地に立つ渋沢史料館=東京都北区
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旧渋沢邸跡地に立つ渋沢史料館=東京都北区
渋沢栄一
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渋沢栄一

 第一国立銀行(現みずほ銀行)、東京瓦斯(現東京ガス)、大阪紡績(現東洋紡)…。日本の近代化を支える企業設立に力を注いだ渋沢栄一(1840~1931年)は「日本資本主義の父」と称される。だが、その活動の原点が、兵庫県の播磨地域にあったことはあまり知られていない。東京・北区にある渋沢史料館を訪ね、その背景をひもといてみた。(西井由比子)

 「播磨行きは、栄一がオーガナイザーとしての才能を開花させ、『日本資本主義の父』と称されるに至った原点と言って差し支えない」。同史料館の桑原功一副館長(51)は解説する。

 埼玉の豪農の家に生まれ、一橋慶喜(後の第15代将軍)に仕官した栄一は、農兵募集の任で現在の高砂市など播磨地域に点在していた領地に赴く。その際、米や木綿の流通に課題を見いだし、改革を進言。類いまれなビジネスセンスを発揮したという。

 一体、何があったのか。栄一は領内を巡るうち、播磨では上米が多く収穫できるのにもかかわらず、年貢米の換金を商人に任せているため、安値でさばかれていることに気付く。これを灘、西宮の酒造家に直接売れば良い値がつく上、中間マージンも省けて一橋家が潤う。

 また、当時の播磨は木綿の一大産地だった。姫路藩が専売制を導入し大坂、江戸への販路を確立させる一方、一橋領は何ら手当てをしておらず、生産量も売値も低く損をしていた。一橋領でも専売制を導入し、その際に藩札(預かり手形)を発行すれば売買の利便性が高まり、領内経済が活性化して一橋家もまた潤う-。

 栄一が提案した2案は即座に採用され、藩札を扱う「会所」も領内の今市(現高砂市今市)に置かれた。この頃、同じく一橋領のあった備中(岡山県)にも赴き、銃の火薬の原料になる硝石が採れることに着目して製造所の開設を勧め、採用された。

 栄一は農兵募集の業務で多くの人と出会い、能力の有無も冷静に見極めていたようだ。桑原副館長は「ビジネスの仕組みを整えるだけでなく、人の組織化にもたけ、立案した事業の実現が可能だった」と話す。

 名を上げた栄一はその後、15代将軍慶喜の命でパリ万博(1867年)の使節団に加わり、経済資本主義の仕組みを吸収。日本に持ち帰って近代国家の屋台骨といえる企業の設立、インフラ、社会制度の整備に着手する。

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 播磨でのエピソードは、栄一を主人公に放送中のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」でも取り上げられそうだ。NHK広報部によると「撮影・編集中で未確定」ながら、第18回(6月13日放送予定)、第19回(同6月20日)あたりで盛り込まれる予定という。「武士として慶喜に仕えながら、武功を上げるより懐を温める策で才能を発揮し、人生を切り開いていくことになる重要な局面。注目してください」としている。

■神戸女学院、神戸電気鉄道、鐘淵紡績兵庫支店… 渋沢、神戸でも数々の足跡 

 渋沢栄一が設立・育成に関わったとされる企業数は約500社、携わった社会公共事業や民間外交は約600に上るとされる。

 渋沢栄一記念財団(東京都北区)によると、兵庫県関連で栄一の関与が判明している事業は、湊川神社境域改修奉賛会▽神戸高等商業学校▽兵庫県立神戸商業学校▽神戸女学院▽楠公会▽神戸電気鉄道▽神戸市水道公債問題▽鐘淵紡績兵庫支店-の八つ。このうち神戸市水道公債問題からは、栄一の国際的な影響力の一端がうかがえる。

 1899(明治32)年、神戸市とモールス商会(横浜市)会長J・R・モールスとの間で売買契約された100万円の水道公債を巡り、問題が起きた。償還通貨に関する認識の食い違いによるもので、裁判沙汰になったところを栄一が仲裁したという。栄一が朝鮮半島での鉄道の売買を通じてモールスと懇意にしていたためで、モールスと当時の神戸市長・坪野平太郎を東京・兜町にあった栄一の事務所に招き、和解協定を結ばせた。

 自身が設立した第一国立銀行の支店があった関係で神戸市にもよく訪れており、要人の利用が多かった「常盤花壇」を定宿にしていたようだ。晩さん会や演説で「オリエンタルホテル」「ミカドホテル」「東亜ホテル」などにも出向いている。施設はいずれも現存しない。

 財界人との交流もあり、1909年には、栄一率いる渡米実業団に神戸政財界の巨頭・松方幸次郎が神戸商業会議所会頭として参加。共に米国視察を果たしている。関西財界の雄・小林一三とも鉄道経営を通じて親交があり、東京の自邸に迎えた写真が残る。(西井由比子)

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