なぜホームレスは激減したのか。
理由の一つが、2002年に施行された「ホームレス自立支援法」だ。同法は国や自治体に支えるべき責務があると明記。官民が就労や居住に協力するきっかけになった。NPO法人「ホームレス支援全国ネットワーク」(北九州市)の担当者は「法律により各自治体にホームレスを支える『根拠』と『責任』ができた。それまでは東京や大阪といった大都市が治安などのため独自でやっていた取り組みが、全国に広がった」とする。
NPO法人「神戸の冬を支える会」(神戸市中央区)の青木茂幸事務局長は、08年末に開設された東京・日比谷公園の「年越し派遣村」を挙げた。
リーマン・ショックの影響で「派遣(社員)切り」が横行。失業と同時に社員寮などを追い出され、住む所を失った人たちが同公園に詰めかけた。青木さんは「霞が関の真ん中でやったから、官僚たちがびっくりした」と振り返る。問題が可視化され、野宿状態でも生活保護を申請できるという大きな流れにつながったという。
だが生活保護への風当たりは強い。「健康で文化的な最低限度の生活」は、憲法で保障されており、生活保護はそのための制度だが、誤った情報や偏見によるバッシングが後を絶たない。
先日もメンタリストを名乗るDaiGoさんが「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら猫を救ってほしい」「ホームレスの命はどうでもいい」などと発言する動画を配信し、批判が殺到した。
青木さんは「ホームレスは一概に働かない人ではなく、障害や育ってきた環境の影響で社会に適応できないケースも少なくないが、理解してもらえない」と話す。
同会は1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに結成した。当時、公園は家を失った被災者であふれた。青木さんは言う。「要因は災害だが、家がなくなったという現象は一緒。ホームレスとなるのは、ちゃんとした支援、施策がないから。社会的な災害状態で、緊急避難が続いている」
