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奥に甲山を望む葭原橋=西宮市
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奥に甲山を望む葭原橋=西宮市
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 希代の小説家、村上春樹さん(72)。作品は世界中に広がり、言葉や文化を超え読者を魅了してきた。その死生観や情景描写が高く評価されるが、村上さん自身、「典型的な阪神間少年」と称するように、原点は西宮と芦屋、そして神戸にある。10月のノーベル文学賞発表を前に、村上春樹研究でも知られる作家土居豊さん(54)=大阪府=と「ハルキを生んだ街」を探った。(霍見真一郎、中川 恵、金井恒幸)

 ■石の橋と海

 僕は戸籍上は京都の生まれだが、すぐに兵庫県西宮市の夙川というところに移り、まもなくとなりの芦屋市に引っ越し、十代の大半をここで送った。高校は神戸の山の手にあったので、したがって遊びにいくのは当然神戸のダウンタウン、三宮あたりということになる。(「辺境・近境」)

 幼少期、父親が甲陽学院(西宮市)の国語教師に就いたことを機に同市南部へ移り住んだ。「作風から街中育ちと思われがちだが、実際は海や山、川といった自然豊かな環境で少年期を過ごした」と土居さん。象徴的な場所が自宅に近かった葭原橋だ。夙川河口近くに架かる石造りの小さな橋は、作品にも登場する。

 橋から見渡すと、北に甲山、南に海が迫る。短編「5月の海岸線」にあるように、春樹少年は海水パンツにはだしで家から毎日飛び出したに違いない。

 河口に出ると、一気に視界が開ける。左には海水浴場だった「御前浜」、右には西宮回生病院が見える。「近接した場所に生と死があった。軽い小説にも常に生死の問題が秘められている」と土居さん。同病院がモデルとみられる場面は「ノルウェイの森」などに登場し、浜に揚がった溺死体の描写も別の作品にある。

 ■喪失と確執

 だが、村上さんの足は次第に故郷から遠ざかる。その一因として、作品からは「故郷の変貌」が読み取れる。海は埋め立てられ、高層建築が立ち並んだ。帰郷がテーマの作品で、村上さんは「海は消えていた」と強い喪失感を表した。

 一方、月刊「文芸春秋」特別号(2019年)に寄せた手記によると、08年に90歳で死去した父親と20年以上会わない時期もあった。土居さんは「父親との確執が大きかった」と指摘する。手記によると、少年時代は映画館の西部劇や甲子園球場の阪神戦に一緒に行ったが、成長するにつれ関係は冷え込んだ。村上さんは書く。「ずっと落胆させてきた、その期待を裏切ってきた」

 阪神・淡路大震災は一つの転機だった。米国にいた村上さんは、帰国を決意。「震災がなければ戻ってこなかったかもしれない」。土居さんがつぶやいた。

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