2002年に北朝鮮から帰国した、拉致被害者の蓮池薫さんが7日、兵庫県丹波市柏原町柏原の丹波の森公苑ホールで講演し、「拉致は非常に残酷。今も(北朝鮮に)残された人は夢と絆を奪われた状況で暮らしている」と訴えた。
蓮池さんは1978年に新潟県で拉致され、24年にわたり北朝鮮での生活を余儀なくされた。講演は8月の「人権文化をすすめる市民運動推進強調月間」に合わせ、市が主催した。
冒頭で蓮池さんは、拉致問題の経緯について解説。米国でバイデン大統領が就任して以降も、米朝間の交渉が進んでいない現状に触れ、「日本政府は被害者の家族に『待って』と言ってはならない。米朝間と切り離した戦略が求められる」と指摘した。
また、北朝鮮での暮らしを振り返り、工作員への語学教育や日本の新聞雑誌の翻訳をさせられたこと、帰国時に飛行機の窓から緑の日本列島が見えて、胸が詰まる思いがしたこと-などを話した。
「残された人たちも家族も、精神的な限界をはるかに超えている。何とかして国に動いてほしい。そのためにも皆さんに関心を持っていただきたい」と呼び掛け、話を締めくくった。(川村岳也)
