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ネコをかたどった自作を眺める濱田さん。作品の購入者が“里帰り”だといって届けてくれた=丹波篠山市内
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ネコをかたどった自作を眺める濱田さん。作品の購入者が“里帰り”だといって届けてくれた=丹波篠山市内
作品を失った濱田さんのもとに戻って来た旧作=丹波篠山市内
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作品を失った濱田さんのもとに戻って来た旧作=丹波篠山市内

 兵庫県丹波篠山市山内町の大規模火災発生から24日で1カ月。被災した8世帯13人は、市営住宅や借家などでの仮住まいが続く。うち5世帯は60~90代の1人暮らし。高齢者施設に入居した人もいる。慣れない、先の見えない生活。やりきれない思いを抱えながら、日々を過ごしている。(堀井正純、綱嶋葉名)

 自宅が全焼し、飼い猫1匹だけを連れ出すことができた濱田廣子さん(76)は、市営住宅で1人暮らし。わずかな家具だけの6畳2間で「これから何をしたらいいのか。ただただむなしく、ぼんやりしてしまう」と、力なく語る。

 造形作家として20年以上活動。古布や石塑(せきそ)粘土で、ネコの立体造形を制作し、個展を重ねてきたが、自宅で保管していた大切な作品の数々も、素材として収集してきた年代物の布や道具も全て焼けた。自宅に赴いてみたものの、焼け焦げた大きな座卓やタンスを見て「何も掘り出す気力がわかなかった」。

 火災のショックだろうか、消防車のサイレンが鳴ると、ビクリと体が反応する。「一瞬で火事のことを思い出した」。料理で火を見るのも怖いという。

 「それでも、少しずつ思いを吐き出せるようになってきたのかな」と、涙をためてほほ笑む。支えてくれたのは、濱田さんが「命の恩人」という近隣女性と、古くからの知人や友人たちだ。

 火災発生時、炎が目の前まで迫る中、「逃げよう」と声を掛けに来てくれた近隣女性が「しばらくの間、私の家で暮らして」と言ってくれた。市営住宅に入居するまでの約2週間、身を寄せた。「引っ越し後も、旦那さんが買い物に車を出してくれる。本当にどうお返しすればいいのか分からない」と声を詰まらせる。

 友人らからは、着の身着のまま逃げた濱田さんのため、「あなたのことを思いながら縫いました」というメッセージとともに、手製の服が届いた。作品を失ったことを知り、購入した旧作を“里帰り”だと言って持ってきてくれた人もいた。自宅玄関に飾っていたネコの作品を焼け跡から掘り出してくれた知人も。焼けたその作品を見て、初めて涙があふれた。

 「正直なんで生きてるんやろうと思うこともある」。テレビを見る気力さえなく、再び制作に取り組もうという気持ちにもなれない。「でも、本当に、周りの人たちには感謝しかない」と話す。「元の場所に戻りたいという思いはある。優しいご夫婦の近くでまた暮らせたら」とつぶやいた。

■4世帯が市営住宅に、2世帯が借家へ

 丹波篠山市の担当者によると、被災者のうち、4世帯が市内の市営住宅で生活。2世帯が山内町などの借家に移り住んだという。

 火災後、1人暮らしの80代の母親を施設へ預けたという60代の男性(大阪府)は「母親は施設暮らしがあまり好きでないようだが仕方ない」と悩ましげ。「兄は関東で、自分も離れて暮らしている。思い出のある実家だが、母も高齢なので再建は難しい」と打ち明ける。

 80代半ばの父と2人、町内の借家に住み始めた40代の男性は「焼け残った自宅から、食器は何とか運び出せたが、こまごまとした日用品を一から買い直しているところ」と疲れた様子。「自分よりも、父がショックを受け、ひどく落ち込んでいるのが心配」と話す。

 被災者支援を統括する横山実・保健福祉部長は「被災した方の困り事や相談に乗る市職員も配置した。高齢の方も多く、これまでと違う環境で暮らし、孤独や不安を感じられるかもしれない。心のケアの問題にも気を配りたい」としている。

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