ジャーナリスト池上彰さんが、神戸新聞を読んだ感想や、現場の記者8人と交わしたやり取りの一部を紹介する。
「もう少し庶民の興味を引くような工夫をしてほしいですね」
森友学園問題の捜査をした大阪地検幹部の異動記事に対する指摘。神戸新聞の見出し「森友捜査の山本氏 函館地検検事正に」に対し、「不起訴とした論功行賞なのか、そうでないのかが分からない」と断じた。
「ニュースを伝え始めたとき、紙に印刷するのが一番正確だから新聞になったわけですよね」
松江放送局を振り出しに、文部省(現文部科学省)の担当など、NHKの記者としてさまざまな現場を踏んだ池上さん。デジタル化の潮流に飲み込まれる新聞業界について、「『紙かデジタルか』という話じゃない。いろいろつかんだ情報をいち早く人々に伝えるのが仕事」と原点に立ち返る大切さを説いた。
「取材で知り合った人に『こう書いてほしかったよね』とか、フィードバックしてもらって人脈を広げていくと、運命の人に出会えるかもしれませんよ」
ニュース解説でおなじみの池上さんが、若手記者の恋愛相談に乗った際のコメント。唐突な質問にも動じず、実直に答えてくれた池上さんだったが、この若手記者はその後…。
「阪神・淡路大震災で何があったか、あなたは語れない。それが強みですよ」
震災が起きたのは23年前の1995年。神戸新聞社でも、当時の記憶がない記者が増えている。震災の翌年に生まれた駆け出し記者の葛藤に、池上さんは、知らないことを前向きに捉えるよう訴えた。
「先輩から『そんなことも知らないのか』と言われたら、『私のような人が増えているんです。だから書きましょう』と。弱みを強みにしてください」
2018/10/31