神戸新聞社は11月3日、朝刊折り込みで12ページの「別刷り」紙面を発行しました。有志による「おもろい新聞プロジェクト(おもP)」が、新聞の可能性をテーマに議論を重ねて作ったものです。
兵庫の多彩な麺類、おまじないのルーツ探訪、記者の仕事紹介…。ジャーナリスト池上彰さんを招いた講演イベントを踏まえ、記事はもちろん、写真や見出しまでこだわりました。
気になったのが、読者の皆さんの反応です。そこで11月3、4日に開催した「神戸新聞まつり」の会場でのアンケートやはがき、インターネットによる調査を実施しました。
特定の紙面に対し、幅広い層から意見を募るのは初めてのこと。446通の回答をまとめた「人気ランキング」を、ご指摘への返信と合わせて紹介します。(文・小川 晶、田中真治、三浦拓也、三島大一郎)
【1位】記者5人が本音をつづる(2、3面)
普段の仕事内容、スクープの裏側、読者への思い、「正平調」ができるまで…記者はどんなことを考えて仕事と向き合っているのか。5人の記者が本音を書いた。
◇ ◇
〈読者の声〉
裏方のことは前に出すべきではない
〈おもPからのお返事〉
「もっといっしょに」。神戸新聞の合言葉です。作り手の息遣いを少しでも皆さんに感じてもらえたら、との思いからで、表舞台に立つつもりはありません!
〈読者の声〉
さまざまな業界のコアな話を知りたい
子育てや教育の情報がもっとほしい
〈おもPからのお返事〉
記者の「おもろい」は、ともすれば独り善がりに。読者の「読みたい」から外れないよう、市民目線を肝に銘じます
〈読者の声〉
事件で呼び出され、すっぴんで駆け付ける記者さん頑張れ
〈おもPからのお返事〉
ありがとうございます。ただ、すっぴんかすっぴんでないかは記事の質とリンクしませんので。念のため
【2位】「麺王国」兵庫を探る(6、7面)
県内発祥で、世界へと羽ばたく「麺」を紹介。独自路線を行くメーカー、秘めたる戦略-を、通常紙面ではなかなか扱えない大きな写真とともに掲載。
◇ ◇
〈読者の声〉
「あっ」というアピールがない。発想転換ともう一工夫を
〈おもPからのお返事〉
「可能性」に限界はない、はず。厳しいご指摘を謙虚に受け止め、挑戦を続けていきます
〈読者の声〉
麺の話題に興味があったが、地元・但馬のそばが取り上げられてなくて残念
〈おもPからのお返事〉
出石、春来、日高…。どのそばも魅力的ですが、今回は紙幅の関係で掲載できませんでした。但馬の味覚については、あらためて検討します。「そば屋の出前」と言われないように…
〈取材に協力いただいたイトメンの担当者さん〉
記事のタッチが柔らかくて読みやすかったけど、ネットニュースはもっと柔らかい。そういう意味では新聞のぬぐいきれないまじめさって言うのかな。嫌いじゃないわ
【3位】池上彰さんと語った記者たち(2~10面)
今夏に社内で開いたジャーナリスト池上彰さんの講演イベントには、若手からベテランまでさまざまな記者が参加した。そこで語られた池上語録、記者の姿を新聞小説風に描いた連作。
◇ ◇
〈読者の声〉
記者がどのように取材しているか、想像しながら記事を読みたくなった
〈おもPからのお返事〉
接点がないと、イメージしづらい職種かもしれませんが、意外と単純です。上司の指示で駆けずり回り、話を聞いて泣き笑いし、締め切りに追われ、居眠りすることも…
〈読者の声〉
雑誌の領域に足を踏み入れている感じがした
〈おもPからのお返事〉
実は「雑誌っぽさ」をあえて意識して編集したページもあります。分相応か、不相応か…
【4位】20XX年の三宮って?(10面)
再開発が進む神戸・三宮周辺。公表されている資料やこれまでの報道を基に、立体的な街のイメージ図を作成。
◇ ◇
〈読者の声〉
身近な街の変化を想像できてよかった
長々とした記事より、ちょこちょこの記事の方が読みやすい
〈おもPからのお返事〉
分かりやすい紙面づくりに、グラフィックは欠かせません。「絵は文字ほどに物を言う」でしょうか
▼「また読みたい」は94%!
さて、ベスト4記事への感想は以上ですが、ほかにもいろいろ。
「文字が小さすぎて読めない!」→渡辺謙さんに放り投げられない紙面にしなくては。
「記事が長すぎて育児や家事の合間に読むには無理がある」→小さなネタからちょこちょこと。まずは小さな一歩です。
そこで、「こんな別刷り特集をまた読んでみたい」の結果は…94.0%!「有料でも読んでみたい」は24.7%。お愛想半分にしても、小躍りしたくなるような数字です。
別刷りだけでなく、本紙でも、読者の皆さんと、もっと「おもろい新聞」を作っていくきっかけにしたいと思います。
▼おもろい新聞別刷りって?
それは、読者(と無読者-新聞を読まない人)の声から始まった。
おもろい新聞プロジェクトは、編集局内の中堅・若手記者を中心に「紙の新聞の可能性」を探ろうと、2016年に発足。シニアから学生まで、さまざまな世代に聞き取りをすると
「平日は新聞を読む時間がない」
「週末にゆっくり楽しめる記事を」
という意見が多く寄せられた。
ならば、「別刷り」を発行しては-。ニュースの振り返りや遊び心のある記事を大胆な写真やグラフィックで見せる。「分かる・役立つ・楽しめる」を基調にまずは創刊120年の挑戦として、11月3日付で第1弾を発行した。
2018/12/1