■生涯かけて護憲を訴え
投開票日、地元・西宮の事務所に元衆院議長土井たか子さんの姿はなかった。
「泥にまみれても」。社民党党首として崖っぷちで臨んだ衆院選。投開票日の夕刻には劣勢が伝えられ、初当選から34年間守ってきた小選挙区の議席も風前のともしびとなっていた。
東京・永田町の党本部で開票を見守った土井さんの心は決まっていた。辞任は4日後。「全ての責任は私にある。党首辞任を決意した」。目元が潤んでいた。
側近の元秘書が絡む辻元清美衆院議員(現立憲民主)の秘書給与詐取事件や、北朝鮮の拉致問題への対応を巡る逆風に加え、自民、民主(当時)の二大政党による「政権選択選挙」の流れに埋没。議席は解散時の18から6に減った。
選挙中、地元で「憲法を暮らしに生かそう」と訴えても振り返る人は少なく、おたかさん頼みの党の限界を見た気がした。
かつて社会党委員長として迎えた1989年参院選は、マドンナ旋風で自民を過半数割れに追い込み「山が動いた」との名文句を残した。憲政史上初の女性議長を経て、自民、新党さきがけとの連立政権解消後、窮地に陥った社民党の党首を引き受けた。
一議員、一市民となっても「憲法を無傷で次世代に手渡したい」と晩年まで活動した。その憲法は今、瀬戸際にある。(小西博美)
【11月の主な出来事】
13日 社民党の土井たか子党首が衆院選敗北で辞任(2003年)
14日 中教審が教育基本法改正で中間報告、愛国心基調に(02年)
15日 ウナギ産地偽装で神戸の水産卸売会社課長ら8人逮捕(08年)
16日 サッカー日本代表がW杯初出場決める(1997年)
17日 長崎の雲仙・普賢岳が噴火(90年)
マンションなどの耐震偽装問題発覚(05年)
18日 神戸空港を巡る住民投票条例案、市会で否決(98年)
19日 イチロー選手の米シアトル・マリナーズ入りが決定(00年)