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兵庫人 第6部 美の冒険者たち

(1-1)旅するアーティスト 地球の力彫刻に注ぐ
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「風はこの星の基本的な要素の一つ。私は目に見えない風を視覚化し、作品にする」と話す新宮晋=三田市藍本のアトリエ(撮影・大山伸一郎)
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「風はこの星の基本的な要素の一つ。私は目に見えない風を視覚化し、作品にする」と話す新宮晋=三田市藍本のアトリエ(撮影・大山伸一郎)

「風はこの星の基本的な要素の一つ。私は目に見えない風を視覚化し、作品にする」と話す新宮晋=三田市藍本のアトリエ(撮影・大山伸一郎)

「風はこの星の基本的な要素の一つ。私は目に見えない風を視覚化し、作品にする」と話す新宮晋=三田市藍本のアトリエ(撮影・大山伸一郎)

■文明との融和を探究

 「この星に生まれてきたことが、どれだけ幸せで素晴らしいことか。そんなメッセージを伝えたかった」

 「風の彫刻」で知られる世界的造形作家新宮晋(すすむ)(70)=三田市=が静かに振り返る。

 温暖化など病める地球の現状に心を痛める。「環境と文明の関係を考え直すきっかけに」と七年前、風車にも似た自らの作品を携え、一年半がかりで世界六カ所を巡るプロジェクト「ウインドキャラバン」に挑んだ。北極圏の凍結湖、モンゴルの草原、モロッコの岩山、ブラジルの大砂丘…。過酷で雄大な風景の中に自作を置き、自然の美をアピール。現地の子どもや先住民たちと交流した。

 「伝えるメッセージより逆に教えられる方が多かった」

 計画は、資金もなく、無謀とも言えたが、理念に共鳴した友人の協力・支援を取り付けた。建築家レンゾ・ピアノや安藤忠雄、神戸出身の美術評論家中原佑介(76)、オランダの振付家イリ・キリアン、仏エルメス社の会長らと現地の人々をも多数巻き込んだ。

 最初の展示会場は、自らのアトリエ前に広がる水田だった。夜には作品がライトアップされ、ホタルが飛び交った。三田で展示後、作品はコンテナに積み込まれ、神戸港から世界へ向けて船出した。

 準備を含め、プロジェクトでの移動距離は実に地球十周半にも上る。子どもの笑顔に力をもらい、先住民らの鋭敏な感覚や知恵に驚き学んだ旅だった。「人間もこの星に生きる動物にすぎないと、あらためて実感した」

 神戸出身の国民的画家小磯良平(一九〇三‐八八年)とは遠縁の親類で、東京芸大でも小磯の教室に学んだ。画家志望だったが、留学先のローマで立体造形の作家に転じ、風や水で動く彫刻で国際的な評価を確立した。奇想天外、優雅な〝舞〟を披露する作品は、世界各地の公園や広場で人々を楽しませている。

 「風は地球の呼吸」「私の作品は、目に見えない風や水のエネルギーをとらえるアンテナのようなもの」

 エコロジーへの関心を深めていったのも、自然な成り行きだった。少年時代、大空にあこがれ、人力飛行機を手作りし、小型飛行機の免許も持つ。新宮自身が「風」であり、地球の声を聞き取り、人々に伝えるシャーマンのごとき存在なのかもしれない。

 今新たな夢を描く。風力や太陽光といった自然エネルギーだけで自立する村「呼吸する大地」の建設だ。そこには学者や技術者・芸術家らが集い、未来の地球の在り方を研究する。構想段階だが「実現すればそこに移り住みたい」。

 国境やアートの枠組みを軽々と超えるその思考。まさに自身が言う「地球遊牧民」らしい生き方だ。(敬称略)

2009/9/2
 

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