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兵庫人 第13部 脱 失われた10年

(1-1)ITベンチャー 「個の力」追い求めて
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「10年前に予想もしなかった今がある。10年先の姿なんて分からない」と語る三木谷浩史さん=東京都品川区東品川、楽天タワー(撮影・小川康介)
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「10年前に予想もしなかった今がある。10年先の姿なんて分からない」と語る三木谷浩史さん=東京都品川区東品川、楽天タワー(撮影・小川康介)

「10年前に予想もしなかった今がある。10年先の姿なんて分からない」と語る三木谷浩史さん=東京都品川区東品川、楽天タワー(撮影・小川康介)

「10年前に予想もしなかった今がある。10年先の姿なんて分からない」と語る三木谷浩史さん=東京都品川区東品川、楽天タワー(撮影・小川康介)

■〝ネット繁華街〟目指し

 「地域貢献度、抜群でしょう」。楽天会長兼社長の三木谷浩史(みきたに ひろし)(43)が力を込めた。運営するインターネット仮想商店街「楽天市場」は昨年、二万軒を突破し、年間四千億円超の商品が取引される。

 北海道拓殖銀行の経営破たん、山一証券の廃業と、日本経済を金融危機が襲った一九九七年、数人の仲間で始めた。

 「銀行や大企業ではなく、個人が社会をつくっていく時代。自分で会社をやりたいと、なんとなく思っていた」

 明石高校、一橋大学を経て入った旧日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)時代に米国留学し、起業を貴ぶ風潮に触発された。九五年一月の阪神・淡路大震災で叔母夫妻ら大勢の死に直面した。「一度だけの人生」と決意し、興銀を飛び出した。

 基本ソフト「ウィンドウズ95」が日本に上陸し、九六年には孫(そん)正義率いるソフトバンクが米ヤフーの日本法人を設立。インターネットが普及し始めていたが、ネット上の商店街はまだ未知数だった。

 「楽天市場を“ネット空間の銀座四丁目”にする」。高級店が並ぶ日本きっての繁華街に例え、地方都市の商店主らに売り込んだ。すべての出店者がうまくいくわけではないが、「倒産するところだったけど助かった、家族が路頭に迷わずに済んだとか、朗報がどっと来た」。

 創業三年後の二〇〇〇年、ジャスダックに上場。証券、旅行会社などを次々買収し事業は急拡大した。そして外資系や情報技術(IT)関連の“勝ち組”が集まった東京・六本木ヒルズに本拠を構えた。

 サッカーJリーグ「ヴィッセル神戸」やプロ野球球団の経営にも乗り出し、ITベンチャーが日本経済のけん引役になったことを印象付けた。

 だが〇六年、ヒルズを舞台にライブドア、村上ファンド事件と不祥事が続く。自社の高株価を武器に強引に企業の合併・買収(M&A)を迫る手法が世間の批判を浴びた。

 喧噪(けんそう)から一線を画すように先月、東品川の新社屋に本社を移した。「彼らを批判する立場にない。いろんなものを変えようというモチベーションはあった」と振り返る。

 既存の秩序を崩すインターネットの世界。しかし、楽天の価値観は、それだけではないと力説する。「ネットには詳しくなくても、いいものを作ったり、お客さんのことを思っている中小企業や個人事業主が商品をネットで売れるようにする。鍵は個の力だ」

 メディア業界へ。海外へ。さらなる成長を追い求める。

 「古い体制に任せておけない。もっと力をつけ、世の中に影響を与えたい。まだまだ成功したとは言えない」

    ◆

 企業倒産、リストラ、戦後最悪の失業…。バブル崩壊後の一九九〇年代以降、日本経済は閉塞感(へいそくかん)に覆われた。「失われた十年」と呼ばれる長期低迷からの脱却へ、起業やものづくり、企業再生の最前線で、兵庫ゆかりの経営者らが奮闘していた。(敬称略)

2008/4/6
 

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