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兵庫人 第21部 観光に懸ける

(1-1)映画の街へ 神戸発ロケ支援の輪
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「神戸ほどロマンチックな街はないでしょう?」。銀幕のような景色を背にほほ笑む田中まこさん=神戸市中央区港島中町1(撮影・大森 武)
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「神戸ほどロマンチックな街はないでしょう?」。銀幕のような景色を背にほほ笑む田中まこさん=神戸市中央区港島中町1(撮影・大森 武)

「神戸ほどロマンチックな街はないでしょう?」。銀幕のような景色を背にほほ笑む田中まこさん=神戸市中央区港島中町1(撮影・大森 武)

「神戸ほどロマンチックな街はないでしょう?」。銀幕のような景色を背にほほ笑む田中まこさん=神戸市中央区港島中町1(撮影・大森 武)

■「復興のため」道開く

 主人公を演じる窪塚(くぼづか)洋介が地下鉄の線路で、列車に背を向けて走りだす。ヘッドライトが迫る‐。

 二〇〇一年に公開された映画「GO」の冒頭場面は、神戸市営地下鉄上沢駅で撮影された。三日間、午前一時すぎから約三時間、敢行された。

 公共の場での撮影は日常生活への影響から規制される。「GO」のプロデューサー國松達也(47)は各地の鉄道会社に依頼したが、ことごとく門前払いされた。「わらをもすがる思い」で声を掛けたのが、ロケの誘致・支援をする非営利組織、フィルムコミッション(FC)「神戸フィルムオフィス」だ。オフィスは、市交通局と撮影日程や経費などを一つずつ詰めていった。

 ロケ当日。撮影を見守るオフィス代表の田中まこ(53)は、感慨深げにつぶやいた。「ほんまに撮れたんや」

 オフィス設立の背景には、阪神・淡路大震災があった。震災三年後、東京で番組制作に携わっていた田中は、神戸市職員から「映像を活用した夢のある復興事業をしたい」と頼まれた。

 西宮に住んだ中高生時代、三宮周辺で買い物を楽しんだ。震災当日、テレビに映る変わり果てた街の姿に驚いた。翌日、西宮の祖母を東京から迎えに行った際、多数の倒壊家屋を見た。「何もできなかった」の思いが残った。

 市職員と話すうちロケ地の魅力を作品で訴え、地域振興に役立てるFCが浮かんだ。欧米で数十年前から活動が盛んなのを知っており、ロケの許可がなかなか下りない国内の撮影環境が不満だった。

 「街のためにも映画のためにも働ける」。二〇〇〇年九月に国内二番目のFCを立ち上げ、神戸に居を移すと精力的に動いた。東京に何度も出掛け、テレビの歌番組にもかかわった幅広い芸能人脈を生かして、知名度アップに努めた。ロケ隊を呼び込むための助成金制度も設け、休日はロケの候補地を探した。

 翌年「GO」を見た映画関係者は驚いた。「神戸なら特別な映像が撮れる」と問い合わせが殺到した。これまで支援した映画やドラマは約千四百本にも上る。

    ◆

 現在、FCは全国で百を超える。撮影地を訪ねたブログも目立つ。「映画は旅のきっかけになる」と胸を張る。

 「神戸のまこさん」と業界で一目置かれ、相変わらず忙しい。特色が違うロケ地を一括アピールするため、県内のFCを結び付ける「ひょうごロケ支援Net」設立にも奔走し、〇六年に実現させた。

 今一番の願いは、地元で撮った作品のヒットだ。「家族や恋人の共通の話題になれば、街に映画がなじむ。そうなれば制作者には、さらに魅力的な“映画の街”になる」

 快活な笑顔に、パイオニアの気概がのぞいた。(敬称略)

2008/12/7
 

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