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新兵庫人 第9部 宇宙への想い

(1-1)本物を見せたい 探求する喜び無限大
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国内最大の光学望遠鏡「なゆた」の前で「本物こそが感動を呼ぶ」と説く黒田武彦さん。常に新しい挑戦を繰り返してきた=兵庫県佐用町西河内、県立西はりま天文台公園(撮影・高田裕司)
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国内最大の光学望遠鏡「なゆた」の前で「本物こそが感動を呼ぶ」と説く黒田武彦さん。常に新しい挑戦を繰り返してきた=兵庫県佐用町西河内、県立西はりま天文台公園(撮影・高田裕司)

国内最大の光学望遠鏡「なゆた」の前で「本物こそが感動を呼ぶ」と説く黒田武彦さん。常に新しい挑戦を繰り返してきた=兵庫県佐用町西河内、県立西はりま天文台公園(撮影・高田裕司)

国内最大の光学望遠鏡「なゆた」の前で「本物こそが感動を呼ぶ」と説く黒田武彦さん。常に新しい挑戦を繰り返してきた=兵庫県佐用町西河内、県立西はりま天文台公園(撮影・高田裕司)

 静かに旋回する巨大望遠鏡が止まり、漆黒の空間のどこかに照準を合わせた。初めてレンズをのぞいた人は、天体の鮮やかさに息をのむ。想像を超えた光景に打たれ、宇宙(そら)への想(おも)いが芽生える。

 兵庫県佐用町の県立西はりま天文台公園。親子らで毎晩にぎわう観望会で活躍するのが、口径2メートルを誇る「なゆた」だ。光学望遠鏡では国内最大。射程範囲は14億光年、高感度のCCDカメラを使えば約140億光年まで及ぶ。理論上は、膨張を続ける宇宙の果てまで観測できる計算だ。

 誰もが楽しめる世界最大の公開天文台は、園長黒田武彦(63)の「本物」への強烈なこだわりがなければ誕生しなかったかもしれない。

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 「日本一の公開天文台を」。兵庫県の担当者の言葉に引かれ、初代の天文台長を引き受けた。前職は大阪市立電気科学館の学芸員。そこでの経験で得た持論は今も運営の指針となっている。

 「教育・普及のためだからこそ、本物を見せたい」

 1990年の開園時、光学望遠鏡の口径は60センチだったが、当時国内に数台しかなかった液体窒素冷却型CCDカメラを設置するなど、専門研究に十分な設備を整えていた。この「本物志向」があたり、初年度から予想の2倍近い約10万人が訪れた。

 だが、黒田は開園したその日に、県幹部らに訴えていた。「宇宙をしっかり研究するには60センチは小さい。今は立派な設備もいずれ陳腐化する」

 実際に近隣で次々と同じ本物志向の公開天文台が誕生し、差別化を図る必要もあった。「口を開けば大型望遠鏡」。熱意が通じ、県知事も94年12月議会で前向きな答弁をした直後に阪神・淡路大震災が発生。計画自体が危ぶまれたが、2000年夏、ついにゴーサインが出る。

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 04年11月に完成した巨大望遠鏡は、サンスクリット語で大量の数を表す「なゆた」と公募で命名された。目標の「日本一」にふさわしい設備が整い、天文台友の会の会員数は約700人に上る。

 だが、黒田は「想像以上に普及や教育活動は時間が必要で、研究を犠牲にしている部分もある。普及活動も常に新しいアイデアを」と反省を忘れない。専門家とアマチュアによる共同研究企画も始めるなど、研究と普及の両立を目指した試行錯誤は続く。2年後に定年を迎えるが、宇宙への想いは尽きない。

 「地球とすべての生命の故郷である宇宙を見ることは人間を知るための原点。すべての人に開かれている探求する楽しさを、もっとともに味わいたい」(敬称略)

2009/12/6

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