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新兵庫人 第27部 世界とつなぐ

(1-1)日本の技 都市守る 下水道再生
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商売の形を変える。「これまではパイプだけだったが、今後は工法を売り込みたい」と自社製品を手に話す高見浩三さん=東京都港区虎ノ門2、積水化学工業東京本社(撮影・吉沢敬太)
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商売の形を変える。「これまではパイプだけだったが、今後は工法を売り込みたい」と自社製品を手に話す高見浩三さん=東京都港区虎ノ門2、積水化学工業東京本社(撮影・吉沢敬太)

商売の形を変える。「これまではパイプだけだったが、今後は工法を売り込みたい」と自社製品を手に話す高見浩三さん=東京都港区虎ノ門2、積水化学工業東京本社(撮影・吉沢敬太)

商売の形を変える。「これまではパイプだけだったが、今後は工法を売り込みたい」と自社製品を手に話す高見浩三さん=東京都港区虎ノ門2、積水化学工業東京本社(撮影・吉沢敬太)

 至る所でコンクリートの内壁がはがれ落ちた下水管。大人の背丈を優に越える管の中を、ロボットがゆっくり前進する。その後には、真新しい塩化ビニール樹脂製の下水管が出来ている。

 積水化学工業(大阪市)が開発した下水道の再生技術。帯のような形の塩ビを下水管の内側に巻き付けていく。

 「当社にしかできない工法で世界の都市を守りますよ」

 開発の指揮を執った常務執行役員の高見浩三(こうぞう)(57)は入社以来、「管」一筋に歩んだ「パイプマン」だ。10年以上かけて完成させた技術を手に2007年、世界市場に打って出た。

 耐用年数とされる約50年を超えた老朽下水管は、世界の都市が抱える社会問題の一つだ。日本でも年間約3800カ所で老朽管が壊れ、道路の陥没事故が起きている。「流れ」が止まれば、日常生活が停止する。ライフラインの一翼を担っている自負がある。

 高見は兵庫県加古川市上荘(かみそう)町出身。父親は土地改良区の役員だった。加古川から引く農業用水が田畑を潤す仕組みに興味を持ち、農業土木を志した。

 加古川東高から岐阜大農学部に進み、本格的にパイプを学んだ。古里の加古川の水流への畏敬が、原点にある。

 「日本の上水道でも5%は漏水している。海外では25~30%なんて当たり前。下水になると、40%は地中に流れてしまう」と高見。だからこそ「与えられた水を100%目的地に届けるのが、パイプの役目」と考える。

 上水道用の塩ビパイプを作っていた同社は、高見が入社した1970年代、塩ビで下水管に参入した。コンクリート製が主流の時代、高見は「売れなくて困った」と当時を振り返る。自治体の下水道担当者は、コンクリートなど〝硬い物〟への信仰が根強かったからだ。「交通量の多い道路の下に塩ビパイプを埋め、強さを確かめる実験を何度も、地道に繰り返すしかなかった」。今では新設される下水管の9割が塩ビ製になった。

 同社は既に欧米の管工事会社を買収し、世界各地に拠点を立ち上げた。財政難と老朽下水管に悩む世界の都市が「地面を掘り返さず、工事費が安い再生技術を求めている」と高見は言う。

 日本の製品や技術が近年、世界的ヒットにつながらない。その様は時に機能性を追求し過ぎた携帯電話のように「ガラパゴス」とも揶揄(やゆ)される。だが、世界市場が待ち望む「日本製」はまだ多い。

 高見はこの事業で、2013年に年商700億円を目指す。下水管の総延長は、日本だけで地球10周分の約40万キロ。「世界規模で見ると天文学的な数字になる。日本発の技術で、世界を制覇してみせますよ」(敬称略)

2011/8/7
 

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