東京の「マギーズ東京」を訪れた森脇真美さん(57)=明石市=は、センター長の秋山正子さん(69)に柔らかな笑顔で迎えられた。昨年9月のことだ。ソファに座り、今の思いを聞いてもらう。
ここでは看護師や保健師らが、全国から足を運ぶがん患者や家族らの相談に応じる。森脇さんは大腸がんで、少し前に主治医から「余命数カ月」と伝えられていた。
「マギーズのような場所が明石にもあればいいのに」。森脇さんが口にすると、秋山さんが優しく語り掛けてくれる。「そういう気持ちでここに来てくれる行動力がすごいのよ。楽しく生きましょう」
楽しく生きる-。秋山さんの言葉を聞き、森脇さんは残された命に思いを巡らせた。「抗がん剤の副作用を我慢してまで治療をやる必要はないのかな」
そして悩んで悩んで、抗がん剤をやめることを決める。
「正解はないけれど、私にとって残りの人生を生き抜くのは抗がん剤を頑張ることじゃないなって。秋山さんに会って勇気をもらいました」
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それから、親戚や友人に会うことが増えた。週末は家族と過ごし、好きな花の写真を撮りに出掛けた。
「親戚にはありがとうって伝えて、主人や娘をこれからもよろしくねって。涙は流さず笑ってね」と森脇さん。
「気持ちは重かったんです。けれども、明るく振る舞ってたかな。本心のまま重い雰囲気で話すと絶対に泣いてしまうからね」。振り返りながら、目が潤む。
自宅にあった服やかばんは入院する前に整理したそうだ。「断捨離っていうの? 夏物とかいらへんと思ってね」。3人の娘を思い浮かべ、姉妹が誰も着られなさそうな服は処分した。
「自分の心の整理です。誰かと一緒だったら悲しいから1人で片付けるの。寂しいより潔い感じよ。だって、もう私に夏は来ないもん」。森脇さんは息を切らしながら、あふれる思いを口にした。
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4回目の取材の時、ベッド脇に置いたスマートフォンを手に取り、私たちに1枚の写真を見せてくれた。「家族で撮ったんよ。マギーズに行った後にね」
森脇さんの隣で夫が孫を抱き、娘3人が笑顔で体を寄せている。温かい家族の雰囲気が伝わってくる。