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 阪神・淡路大震災で更地になり、今も被災地に点在する空き地。その面積は神戸市内で百六万平方メートルに及び、復興土地区画整理事業地区では、宅地面積の四分の一を占めるところもある。震災から八年五カ月が過ぎ、住宅再建などを予定する地主は少なく、「空き地として固定化しつつある」との声も。空き地はなぜ残るのか。今後どうなるのだろうか。(石崎勝伸、宮沢之祐)

 震災で住宅が倒壊または焼失した空き地は現在、特例で固定資産税などが軽減されている。

 神戸市内で最も多い二十四万平方メートルの空き地を抱える神戸市長田区で、区画整理が進む御菅西地区。仮換地指定率は96%を超え、大半の地主は仮換地先に建物を再建できる。

 しかし、まちづくり支援グループ「まち・コミュニケーション」の調査では、全宅地面積約二万六千平方メートルのうち、四分の一が空き地のまま。うち市有地が66%(約四千四百平方メートル)を占め、民有地は34%(約二千三百平方メートル)ある。

 市有地が多いのは、神戸市が御菅西地区で事業用地確保のため、土地を買収したから。いずれ売却処分するが、狭小宅地もあり、不動産不況の中で難航が予想される。

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 同地区で鉄工所を経営していた男性(61)は被災し、同市西区の工業団地に移転した。鉄工所跡地は空き地となり、「借金して工場を拡張した。長田に戻る考えはない。先祖代々の土地を簡単に手放せないし、貸すにも相手とのトラブルが心配で慎重になる」と話す。

 兵庫県市街地整備課は、区画整理事業地区の民有の空き地のうち、地主の六割ほどが地区外に土地を所有して住み、家を建てる動機に乏しいとみる。地区外で賃貸住宅などに住む残る四割も、「高齢で融資が受けられなかったり、土地が狭過ぎたりといった事情がある」と指摘する。

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 空き地が残る現状は、商店街ではさらに深刻だ。長田区の新長田本町筋商店街にある中の町地区。震災前は計三十店あったが、今は八店舗分が、商店街の中でぽっかりと空いている。

 震災前には店舗付き住宅を貸していた空き地の地主(69)は「資金をつぎ込んで再建しても、この不景気で借り手がつくかどうか」。布団店を構えていた別の女性地主(74)は「震災後、夫が亡くなり、息子も会社勤めなので店の再建をあきらめた。土地が狭い上、今はたとえ売れても二束三文だし…」と漏らした。

イベント広場など 地主の協力で活用も

 空き地を抱える地域も、ただ手をこまねいているだけではない。暫定的ながら、地主の協力を得て活用するケースが出てきている。

 神戸市長田区の新長田本町筋商店街は、地主の協力が得られた空き地約百十平方メートルを、市の支援事業で補助を受け、芝生や板張りの広場に整備。「ビッグハート広場」と名付け、花を植えたプランターも並べ、定期的に催しを開いている。

 今月十一日には、名古屋市立(猪子石(いのこいし))中学校の修学旅行生が、同広場で地元の人から絵手紙の書き方を学んだ。「青空の下なので気持ちいい。店の人や買い物のお客さんもみんな声をかけてくれる」と女子生徒。

 受け入れの中心となった金物店経営の山本(豈夫(やすお))さん(65)は「少しでもにぎわいを回復させ、この商店街に店を出したいと思ってもらえるようにしなければ」と話す。

 神戸市はこうした空き地を地主から借りるなどして、地域に無償で貸す事業を実施した。三年間の借受期限が十カ所で切れたが、うち七カ所で地主の協力を得られ、地域団体が独自にイベントを続けている。

 神戸市灘区の灘中央地区まちづくり協議会は、整備した広場で幼児や親子向けの催しを定期的に開き、地域の活性化を図ることにしている。

2003/6/18
 

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