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阪神・淡路の被災地から続々と出版される書籍
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阪神・淡路の被災地から続々と出版される書籍

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阪神・淡路の被災地から続々と出版される書籍

災害対応の手引書に 東北へ提言さまざま
 苦難の記録を再評価 市民目線で呼び掛け

 東日本大震災を受け、阪神・淡路大震災の復旧・復興に携わった関係者による出版が相次いでいる。法制度の改善やまちづくりへの提案、ボランティア入門書など多彩。東北で復興への動きが始まろうとする中、教訓を積極的に発信しようとする機運が高まっている。(災害特報班・安藤文暁)

 ひょうご震災記念21世紀研究機構(神戸市)がまとめた「災害対策全書」(ぎょうせい)は「災害概論」「応急対応」「復旧・復興」「防災・減災」の全4巻。各巻300~500ページを超える大冊だ。

 政府の東日本大震災復興構想会議議長で、同機構副理事長の五百旗頭真(いおきべ まこと)・防衛大学校長を筆頭に、研究者や行政、企業、ボランティアの234人が執筆した。世界と日本の自然災害から疫病、テロまでを扱う。災害対応や生活支援、まちづくりの手引書となっている。

 研究者らの提言本も目立つ。同志社大学大学院の林敏彦教授の「大災害の経済学」(PHP新書)は、兵庫県「復興計画策定調査委員会」や、ひょうご震災記念21世紀研究機構研究統括を務める著者が、経済学者の立場から復興を見据える。

 大災害では常識を超えた対応が必要と指摘。「復興事業に投じる公的資金は、将来の被災地の幸福を生み出すための『投資』」として、地方自治体だけでなく、政府の関与が不可欠と強調する。

 関西学院大学災害復興制度研究所の山中茂樹教授は「漂流被災者 『人間復興』のための提言」(河出書房新社)で、住民のコミュニティーが崩壊した阪神・淡路の悲劇が東日本でも深刻化しているとし、「暮らし」が主役の復興こそが必要と説く。

 コミュニティー重視については、大学教授らでつくる市民団体「兵庫県震災復興研究センター」も「東日本大震災 復興への道-神戸からの提言」(クリエイツかもがわ)で「被災者が自宅の跡地に家を建てたり改築したりするのを支援すれば地域に人が戻る」などと提言している。

 学芸出版社の「神戸の震災復興事業-2段階都市計画とまちづくり提案」は、神戸市職員として復興に携わってきた中山久憲さんの労作。神戸市が行政執行と住民参加を両立しようとした「2段階都市計画」を振り返り、東北の復興にも示唆を与える。

 また、みすず書房は、兵庫県こころのケアセンター(神戸市)初代所長中井久夫さんのこれまでの著書を再編集し「災害がほんとうに襲った時」「復興の道なかばで」を緊急出版した。

 きっかけをつくったのはノンフィクションライター最相葉月さん。精神科医の著者が阪神・淡路で患者らの苦難と向き合った記録は「災害の種類や時代を超えた普遍的なメッセージがあります」と評価する。

 ボランティア関連では、東北の支援を続ける被災地NGO恊働センター(神戸市)の村井雅清代表が「災害ボランティアの心構え」(ソフトバンク新書)で「ボランティアは押しかけていい」と強調し、行政による抑制に異議を唱える。

 弁護士や税理士、建築士らが設立した「阪神・淡路まちづくり支援機構」(事務局・兵庫県弁護士会)は「ワンパック専門家相談隊 東日本被災地を行く」(クリエイツかもがわ)を10月末に出版。専門家らが業種を超えて災害支援ネットワークを構築しようと呼び掛ける。

 11月には、兵庫県震災復興研究センターなどが「『災害救助法』徹底活用」(同)を、兵庫県立舞子高校の諏訪清二教諭が「高校生、災害と向き合う-舞子高等学校環境防災科の10年」(岩波ジュニア新書)を出す。

2011/10/23
 

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