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借上復興住宅 20年目の漂流

(10)取材を終えて 5回目の危機が迫る
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神戸市兵庫区の借上住宅
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神戸市兵庫区の借上住宅

神戸市兵庫区の借上住宅

神戸市兵庫区の借上住宅

 この連載では、借上住宅の入居者が20年目に迫られる状況を「退去」と書いた。だが、神戸市の遠藤卓男住宅部長は「追い出そうとしているのではない。他の市営住宅への住み替えをお願いしている」と理解を求める。

 確かに、住まいは保障される。高齢になっても体力、気力があり、新しい場所で生活を始められる人もいるだろう。都市再生機構(UR)や民間の正規の家賃を払えば、20年以降も同じ場所に住み続けることはできる。

 だが、年金数万円の高齢者で7、8万円の家賃を払える人は少ない。

 神戸市の調査では、退去が必要な棟に住む約2300世帯のうち、継続入居の基準に該当しないのは6割強。このうち県営なら継続入居できる80~84歳は約500世帯という。

 遠藤部長は「住み替えを前向きにとらえてほしい」と話す。

 かかりつけの病院や世話をしてくれる家族、知人の近くに住める場合もある、と。実際、転居先の市営住宅では見回り活動を充実させ、安心して暮らせる環境を整えるという。

 だが、高齢者の個人差は大きい。気力、体力ともに衰え、今の暮らしを維持するのに精いっぱいの人がいる。

 兵庫県医師会常任理事の豊田俊医師は「近隣住民のインフォーマルサービス」が高齢者の自立には欠かせないという。何げないあいさつで安否確認をし、世間話で元気になり、時にはおかずを融通し合う。そんな間柄だ。

 「大切なのは、その人の社会関係性も含め、一人一人の事情に向き合うこと。単純な線引きは高齢者の置かれている現状にそぐわない」

◎      ◎

 兵庫県が実施する「判定委員会」を他の自治体も導入できないだろうか。要介護3以下、重度障害者以外でも高齢者なら福祉や医療の専門家が個別の事情を審査し、継続入居の可否を決める。神戸市の久元喜造市長は「悩みに悩んで決めた矢田前市長の方針を踏襲する」、西宮市の岡筋政之住宅部長も「かえって混乱しかねない」と話し、現段階で導入の考えはないという。

 自治体によって異なる継続入居の基準が入居者を不安にしている。兵庫県がリーダーシップをとり、基準をそろえられないか。取材に対し、井戸敏三知事は「相談には乗るが、財政負担に差があり、全部を同じ基準にするのは、現時点では難しいのでは」と答えた。

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 神戸市の入居者協議会代表の安田秋成さん(88)は訴える。

 「震災後、高齢者は弱者と呼ばれました。弱者は震災で死に、避難所で死に、仮設住宅で死に、復興住宅でも死にました。4回の危機を乗り越えた弱者に、5回目の危機が迫っています」

 震災から20年目。私たちも問われている。(木村信行)

=おわり=

2014/1/23

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