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コロナ禍で地震が起きたとき

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熊本県人吉市の避難所。新型コロナウイルス対策でマットの間隔を空けて配置していた=2020年7月4日
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熊本県人吉市の避難所。新型コロナウイルス対策でマットの間隔を空けて配置していた=2020年7月4日

熊本県人吉市の避難所。新型コロナウイルス対策でマットの間隔を空けて配置していた=2020年7月4日

熊本県人吉市の避難所。新型コロナウイルス対策でマットの間隔を空けて配置していた=2020年7月4日

 私たちは、新型コロナウイルスの猛威の中にいる。日本にウイルスが現れた昨年は12年ぶりに台風の上陸がなく、震度6以上の地震もなかった。だが、26年前、直下型地震が無警戒の街を襲ったように、自然災害は容赦なく、平穏な日常を修羅場に変える。今、巨大地震が起きたら-。想像もしたくない事態だが、巡り来る「1・17」を前に、しっかりと目を向けたい。

 昨年末、私たちは熊本県を訪ねた。7月3、4日の記録的豪雨は九州一円に甚大な被害をもたらし、コロナ禍で初の大規模災害となっていた。

 2341棟が全半壊し、20人が亡くなった人吉市で最大の避難所「人吉スポーツパレス」は、氾濫した球磨川から約1キロ離れた市街地の中心部にあった。閉鎖直前で、避難者の姿はまばらだった。

 通常の定員は千人だが、密を避けるため半分程度に減らしていた。対応した保健師は「出入りする一人一人を漏らさず検温した。30分おきの換気も欠かさず。猛暑だったけど、必要なことなので」と振り返った。

 他市町村も避難所の定員を大幅に減らし、必要に応じて避難所を新たに確保し臨んだ。一部で避難者が定員を上回ったものの、大きな混乱はなく、避難所でコロナ陽性となった被災者はいなかった。

 「パーティションなど国からの物資調達が迅速で、早めに避難所の環境整備が図られた。熊本地震の教訓が生かされた」。県の担当者はそう説明した。

 だが、それは本当の危機ではなかった。

     ◇

 この災害で、熊本県では南部を中心に5千棟が全半壊し、最も多い時で212カ所の避難所に約2500人が身を寄せた。だが、県内16市町村が当日発令した避難指示・勧告の対象は約27万人。避難率は1%に満たなかった。

 人吉市の隣の球磨村を取材した。全1366世帯の約3分の1が浸水被害を受けていた。自宅の2階まで浸水し、ボートで救助された男性(72)は「落ち着かない避難所で寝るという考えがなかったし、今後もない」と話した。

 試練は2カ月後に訪れた。9月初め、「特別警報級」の台風10号が九州に接近し、約22万人が避難所へ身を寄せた。被害軽減につながった一方、避難所の定員超過が相次ぎ、熊本では全14市のうち11市で満員の避難所が出た。

 最大約430万人の避難が想定される南海トラフ巨大地震では、自宅避難できない避難者がいや応なく避難所に詰め掛ける。神戸新聞社のアンケートでは、想定される最大規模の地震で避難すべき人が避難すれば、兵庫県内の20市町で定員超過となる恐れがある。

 兵庫県立大大学院の室崎益輝(よしてる)教授(76)は「直下型地震では大火も起きる。命を守るのが優先で、避難所の定員を減らすのは被災者の追い出しだ」と主張する。台風10号では、定員を超えて被災者を受け入れた避難所もあった。兵庫県内でも複数の市町が「満員でもひとまず受け入れざるを得ない」と答えた。

 避難者の数が増えれば、避難所内の感染防止対策もさらなる徹底が求められる。それは避難所での「関連死」が相次いだ阪神・淡路大震災以降の改善の成果を問うものでもある。私たちは熊本県での取材を続けた。(金 旻革、竹本拓也)

2021/1/12
 

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