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「電源がない場所での充電のために、電池も重要」と説明する益田紗希子さん=大阪市
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「電源がない場所での充電のために、電池も重要」と説明する益田紗希子さん=大阪市
3時間閉じ込められた時を想定して作ったポーチの中身=大阪市
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3時間閉じ込められた時を想定して作ったポーチの中身=大阪市

 兵庫県三田市在住の母親らでつくるNPO法人「ミラクルウィッシュ」が、防災に特化した「さんだ女子防災部」を立ち上げ、親子でできる備えや避難時に気を付けることを伝えている。活動の原点には、11日で丸10年となる東日本大震災がある。未曾有(みぞう)の災害に見舞われた時、子育て世代ならではの不安があるとして問いかける。「そのとき、わが子を守れますか?」(喜田美咲)

 女子防災部は、官民が地域課題の解決に一緒に取り組む「協働事業提案制度」に採用されたのを機に、2017年に始まった。以来、県や三田、神戸市などから講演依頼を受けたり、親子イベントで防災ブースを設けたりして防災知識の普及に努めている。

 例えば被災時の食について。「非常事態だからといって、乳幼児が何でも食べてくれるわけではない」と訴え、普段食べているご飯や菓子を消費しながら買い足す「ローリングストック」を推奨する。避難所で最も困る問題がトイレだといい、トイレットペーパーの常備や、千円ほどで購入できる便座付きの簡易トイレの準備も呼び掛ける。

 持ち出し用の袋として、ポーチとリュックサックの準備が必要とも紹介。ポーチは、3時間程度閉じ込められた場合を想定し、飴(あめ)や袋型の携帯トイレ、懐中電灯やスマートフォン用充電器などを入れる。リュックサックは数日間の避難に対応できるよう、紙皿や軍手、水や口内ケア用品も入れておく。今後はポリ袋を湯煎してご飯や肉じゃがを作る方法も伝えたいという。

     ◇     ◇

 活動を始めたのには同法人の代表、益田紗希子さん(41)=大阪市=の強い思いがある。あの日、益田さんは和歌山市にいた。

 2011年3月11日午前、産婦人科で初めての妊娠を告げられた。「お母さんになれるんだ」「会社に休みを届けないと」。新たな命と出会える喜びを実感しながら帰宅した。

 昼すぎ、揺れを感じてテレビをつけた。一転、暗やみに突き落とされた。町が次々と津波にのみ込まれる。恐怖で涙が止まらなくなった。「こんなとき、子どもの手を引いて安全な場所に逃げられる?私ってお母さんになれる?」。不安が押し寄せた。

 11月に無事、長女を出産。その1カ月後、夫の転勤に伴い、三田市に移った。親戚も友人もいなかったが、地域のママたちと交流する機会ができた。14年、母親世代の活躍を広げる場として、ミラクルウィッシュを立ち上げた。真っ先に「私は防災を学びたい」と提案した。

 市の出前講座や女性の防災士を招いた勉強会で知識を深め、17年に女子防災部を設立。講演で話す側となり、19年度は計27回のイベントで防災を呼び掛けた。20年度は新型コロナウイルスの影響で思うように動けなかったが、会員制交流サイト(SNS)を活用し、写真を使った解説を発信している。

 先日の講演で「子どもの手を引いて歩くより、ベビーカーを使った方が安全ですよね」といった問いを受けた。「がれきや柱が倒れて進めなくなるかもしれないですよ」と答えたが、防災を学ぶ前は自分も同じことを聞いたかもしれない。あらためて伝えたい。自分の住む地域の地形や危険箇所は自分で把握する。家族の命を他人や行政に委ねてはいけない。

 次の目標もある。大学生を巻き込んだ活動や、キャンプの知識を活用したイベントで、若い世代にも身を守る方法を共有していくことだ。「備えを『意識の高い』ものではなく当たり前にすべきことだと感じてほしい」

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