都市のヒートアイランド現象という言葉を聞いたことがあると思います。これは都市の気温が上昇する現象で、都市内で緑地や水面が減少し、人工物が増えたことが原因として指摘されています。この現象は、われわれの住環境に影響するだけでなく、熱中症など健康問題にも関わっています。私の研究テーマは、このヒートアイランド現象を考慮した都市や建築のあり方について考えることです。
現在、ヒートアイランドの対策として指摘されているのが、都市内に緑や水を増やすこと、それから建物や都市の作り方の工夫をすることです。例えば近年、屋上緑化や壁面緑化が流行しています。特に壁面緑化については、多くの通行者の目に触れることから、デザイン面で優れたものも増えています。
また住宅などの造り方についても、建物内に風の通り道を作り、夏は熱い空気を逃がして外部の涼しい空気を取り込むことにより、住宅の快適性が増すだけでなく、エネルギー消費などを抑えることも可能です。さらに建物の断熱性を高めることで冷暖房の利きがよくなり、これは大気中に放出される熱を減らすことにもつながります。
一方都市レベルでみるならば、緑地や水面を保全しつつ、川や海で発生する冷たい空気を市街地に取り込む風の道も注目されています。一般的に河川や街路樹の多い道路、公園などが風の道として機能することが分かっています。
都市の土地利用も重要な視点です。建物の密度が高くなればそれだけ熱も発生し、さらには風通しも悪くなるので、ヒートアイランドが加速します。また都市の土地利用の変化は、周辺の土地利用にも影響を与えます。
広域の土地利用の変化については、将来人口や都市の個別の事情などが影響し、その点で多くの可能性があるのですが、研究ではいくつかのシナリオを設定し、気温変化を予測しています。都心部はすでに土地利用が密になっているので、今後新しい都市化が進むことは少ないと思われますが、臨海部などではまだ余地があるので、このまま都市化が進むと局所的な温度上昇が導かれる可能性もあります。
もう少し狭い範囲で調査をしてみると、緑地や水面を配置することが有効に働くことが分かります。写真=は、サーモグラフィーを用いてキャンパス内を撮影した熱画像です。緑がある部分とない部分で表面温度が大きく異なることが分かると思います。表面温度と気温は別のものですが、一定の相関があります。
周辺環境の表面温度は体感温度にも大きく影響します。実際、真夏の街中を歩く際には、街路樹のある道を選ぶと気温以上の差を感じることがあると思います。これからの暑くなる季節、外出時にはこのことを思い出していただければ、より快適に過ごすことができるかもしれません。
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