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中●直之研究員 ※注●は、浜の異体字
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中●直之研究員 ※注●は、浜の異体字
野生のサギソウの花。地域によっては園芸品種の遺伝子が混じっていることが分かっている
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野生のサギソウの花。地域によっては園芸品種の遺伝子が混じっていることが分かっている

 見出しで突然難しい言葉が出てきましたが、皆さんは遺伝的撹乱(かくらん)という言葉はご存じですか? 簡単に言うと、人間によって運ばれた生き物と交配することで、野生の生き物がもともと持っていた遺伝子が変化してしまう現象を指します。今回は、遺伝的撹乱についてご紹介したいと思います。

 遺伝的撹乱は、実は身近な生き物でもしばしば生じることが分かっています。例えば、2017年に行われた全国のメダカを対象とした研究では、調査した場所のうち、およそ半数で遺伝的撹乱が見つかりました。ひとはくが実施した研究でも、兵庫県内の野生のサギソウの一部から園芸品種由来の株が見つかったことが分かりました。ほかにも、ニッポンバラタナゴ、オヤニラミ、アツモリソウなど、国内の遺伝的撹乱の報告例には枚挙にいとまがありません。

 そもそも、なぜ遺伝的撹乱はよろしくないのでしょうか。その理由としては、大きく分けて二つあります。一つ目に、住む環境や地域によって独自に進化している遺伝子を壊してしまうためです。例えば、ゲンジボタルは東日本と西日本で発光する時間が異なっています。彼らの発光はいわばプロポーズですから、仮に東日本から西日本に運ばれた場合、プロポーズがうまくいかずに正常な繁殖ができなくなってしまいます。このように、遺伝的撹乱が起こることで、野生の生き物が絶滅してしまう可能性が高まってしまいます。

 二つ目に、地域ごとに育んできた生き物の歴史が破壊されてしまうことです。野生の生き物は、その多くが非常に長い時間(少なくとも数十年~数百万年以上)をかけて進化させています。古い建物や仏像が文化財として大事にされる一方で、これらの生き物の歴史も人間が安易に変えていいのか、もう一度考えるべきかもしれません。

 それでは、遺伝的撹乱を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。私たちにできることは、安易に野外に生き物を放さないことです。飼育しているペットや栽培している植物は最後まで責任を持って飼育すること、また、自然再生が目的であっても、野外に放す際には専門家と十分に相談することが重要となります。こうした心がけによって、遺伝的撹乱は簡単に防ぐことができます。ぜひとも皆さんと一緒に、野生の生き物を守っていけたらと思います。(中●直之研究員)

※注●は、浜の異体字

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