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マイスターの試験で製作した靴
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マイスターの試験で製作した靴
ドイツの国家資格「整形靴マイスター」を取得した北川大介さん=三田市福島
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ドイツの国家資格「整形靴マイスター」を取得した北川大介さん=三田市福島
北川さんが製作した整形靴
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北川さんが製作した整形靴
母校で講演する北川さん=神戸医療福祉専門学校三田校
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母校で講演する北川さん=神戸医療福祉専門学校三田校

 ドイツの国家資格で、職人最高位の称号「マイスター」。技術が優れているだけでなく、後進の育成を担い、経営の知識も備えている。神戸市北区出身の北川大介さん(29)は今春、整形靴マイスターを取得した。日本人の取得者は10人に満たないといい、北川さんは「マイスターはゴールではなく、新たなスタートライン。日々勉強して、常にベストの靴をつくりたい」と意気込む。(土井秀人)

 整形靴とは、外反母趾(ぼし)や左右で脚の長さが違うなど、足の悩みを抱える人に向けて製作するオーダーメードの靴。北川さんは2012年、神戸医療福祉専門学校三田校(兵庫県三田市福島)の整形靴科を卒業し、マイスターのいる神戸の会社に就職した。

 工房ではドイツ出身のマイスター、ダニエル・ウィンデルさんの下で働いた。インソール(中敷き)を初めてつくった際の記憶は鮮明だ。ダニエルさんに見せると放り投げられ、ゴミ箱に捨てるよう指示された。

 北川さんは驚いたが、その後のダニエルさんの行動にさらに驚いた。「仕事について、1から10まで教えてくれた」。整形靴作りの理論や、どんな意図で仕事をしているか。患者にはどう接したらいいか。

 「仕事は見て覚える」。職人にはそんなイメージを持っていたが、ダニエルさんは対極だった。モチベーションを高めてくれるのも上手だった。成長したところを具体的に褒め、いかに改善すれば100%の完成度に近づくか指導してくれた。ダニエルさんに憧れ、整形靴が好きになった。

 「もっと勉強したいなら、システムの整っているドイツに行った方がいい」。そう勧められ、15年にドイツに渡った。23歳だった。

    ◇

 ドイツのマイスターには、どうやったらなれるのか。

 北川さんによると、まずは「アズビ(見習い)」として働きながら、職業訓練学校に通う。整形靴は3年半で、職場のマイスターから技術を学び、学校では理論を教わる。職業訓練学校の学費は無料だ。

 見習い期間が終わり、試験に合格すると国家資格「ゲゼレ(職人)」を取得。その中の一部が、マイスターを目指すという。

 マイスター取得には、さらに学校に通わなければならない。整形靴コースのある学校はドイツ国内に5校しかないといい、定員は各校12人だ。資格取得のためには、技術▽知識▽経営学・法律・簿記▽教育学-の4分野の試験に合格する必要がある。

 だからこそマイスターは、国が技術を保証するだけでなく、弟子の育成や起業が認められている。

    ◇

 ドイツに渡った北川さんは、かつてダニエルさんが修行した会社で働いた。日本の専門学校を卒業し、3年間働いた経験があったため、ゲゼレを取得せず、直接マイスターを目指す道を選んだ。

 最初は全くドイツ語が話せなかったため、苦労の連続だった。ジェスチャーで仕事を指示されると、経験を基にどのような工程か想像し、何とかこなした。誰ともコミュニケーションが取れず、ホームシックにもなった。

 それでも少しずつ言葉を覚え、仕事の疑問を質問できるようになった。3年目になると、お客さんとの会話も可能になった。

 マイスターの学校には、18年10月に入学した。全日制で9カ月間、整形靴の技術などを学んだ。授業はドイツ語で専門的な内容のため、ついていくのに必死だった。メモが追いつかず、クラスメートのノートの写真を撮らしてもらった。リポートの課題では他の人の2倍となる8時間がかかり、徹夜で仕上げたこともあった。

 周囲は皆ドイツ語が母国語だったが、最終試験の技術の成績は2位だった。日本から取り寄せた着物の生地を使い、整形靴を製作した。

 その後、経営学などを学んだが、新型コロナウイルスの影響で授業が中止に。今年5月、ようやくマイスターを取得した。「達成感はあったが、ほっとしたのが一番」という。

 現在、マイスターとしてドイツの会社で働き、弟子の育成にも携わる。整形靴は生活を支える靴だ。製作の際は、いつも思う。「大切な人に会いに行く時、一歩でも早く行けるような靴を作りたい」

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