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培養皿で培養する多能性幹細胞(万能細胞)。受精卵のみで使われる遺伝子が一部の細胞で使われていることが分かる(赤色)。
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培養皿で培養する多能性幹細胞(万能細胞)。受精卵のみで使われる遺伝子が一部の細胞で使われていることが分かる(赤色)。
関由行教授
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関由行教授

 ヒトにはいつか必ず死が訪れ、個体の死と共に体中に存在する細胞も死へと向かいます。その中で唯一、死を免れることができる細胞があります。生殖細胞(卵・精子)です。生殖細胞以外の細胞は、年齢を重ねるにつれ「老化」していきますが、生殖細胞には老化を防ぐ仕組みや老化した細胞を若返らせる仕組みが備わっています。

 さらに、卵と精子が受精すると受精卵ができます。受精卵が神経細胞、筋細胞など体に存在する全ての細胞を生み出すことで、新たな生命が誕生します。生殖細胞には次世代へ遺伝情報を伝える役割があるため、誕生した生命の1世代で終わるのではなく、新しい生物の誕生(進化)までつながっています。つまり細胞レベルで考えると、生殖細胞は数億年を超えて死なないことが分かります。「自分はいつか死ぬ、でも自分の細胞は死なない」と考えるだけでワクワクするのは私だけではないと思います。

 私たちの研究室では、あらゆる方法を駆使して生殖細胞をのぞき込むことで、生命と生命をつなぐ仕組みを解き明かし、その仕組みを操ることで再生・生殖医療への貢献を目指しています。生殖細胞に備わる特別な能力を「操作」することが可能となれば、どのような未来が待っているのでしょうか?

 近年の晩婚化などを背景に夫婦の約5組に1組が不妊の検査や治療を受けています。また、2019年に誕生した子どものおよそ14人に1人は、体外受精で生まれています。不妊の原因はまだまだ不明な点が多くあります。私たちは試験管の中で卵や精子、受精卵を作り、その中で働く遺伝子を調べることで、不妊の原因となるような遺伝子の同定を試みています。

 「ゲノム編集」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。近年の技術革新によって、遺伝情報を容易に改変することができるようになりました。この技術を使えば、不妊の原因となる遺伝子の傷を「正常化」することが可能です。

 さらに、マウスを使った実験ですが、iPS細胞から卵・精子を作り、子どもを作る方法も開発されています。このような技術を組み合わせることで、不妊患者の皮膚から誘導したiPS細胞で遺伝子の傷を修復し、卵もしくは精子を作り出すことも技術的には可能になりつつあります。

 このような社会的な問題解決につながるような研究ですが、研究室の日常は、毎日の細胞の世話と地道な実験に明け暮れる日々です。時折、生殖細胞がそのご褒美のように、美しく、かつ巧妙な仕組みを見せてくれ、学生と一緒につかの間の興奮を味わい、また地道な作業へと向かっていきます。

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