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モロハサウルス・カミタキエンシスの標本
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モロハサウルス・カミタキエンシスの標本
モロハサウルス・カミタキエンシスの生体復元画
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モロハサウルス・カミタキエンシスの生体復元画
池田忠広主任研究員
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池田忠広主任研究員

■池田忠広主任研究員

 2019年、兵庫県丹波市山南町上滝篠山層群大山下層にて大規模な発掘調査が実施されました。この調査で恐竜類(非鳥類型)の卵・卵殻化石が多数発見され、これらとともに小動物の化石が複数確認されました。今回はこの小さな化石について、その研究成果をご紹介します。

 現場で調査をしていると、小さな歯のようなものが私の目に留まりました。その大きさは数ミリ程度。ルーペを使うと歯の一部であることが確認できました。「恐竜の歯にしては小さい、もしや?」と思い、技師に化石の剖出(クリーニング)処理を急ぎお願いしました。予感は的中、それは2センチ程のトカゲの歯骨(歯がある部位・下顎の一部)化石でした。篠山層群からはこれまでも多数のトカゲ類化石が発見されており、パキゲニス・アダチイなど複数タイプが報告されています。私はこれらの研究に長年携わっていますが、この化石を見た瞬間に「あ!これはこれまでとは違う。多分あいつだ!」と直感し、興奮したことを今でも覚えています。

 このトカゲ類の歯骨化石は、これまで同層から報告されているものとは歯や歯棚(歯が付く部位)の形状が明確に異なります。その特徴からオオトカゲ類の化石だと見た瞬間に断定できました。篠山層群が堆積した前期白亜紀、オオトカゲ類の報告は数えるほどしかありません。さらに詳細にどのグループのものか検討していきます。

 結果、この化石はモンスターサウリア類(ドクトカゲ類の仲間)の一種であり、既知種とは異なる特徴(鋭くとがった歯の前後にブレードがあるなど)から新属・新種であることが明らかになりました。その特徴からモロハサウルス・カミタキエンシス(もろ刃のトカゲ)と命名されました。この種はモンスターサウリア類の世界最古、また前期白亜紀からの初めての報告になります。併せてこのグループが東ユーラシア地域に起源する可能性を示唆しています。

 たった数センチの化石が、新たな記録、学術的知見をもたらしてくれました。これだから小さな化石の研究はやめられません。今後も新たな発見を期待していてください。

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