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ピアノを演奏したミチコさん=県立人と自然の博物館
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ピアノを演奏したミチコさん=県立人と自然の博物館
標本が並ぶ会場で、三橋弘宗主任研究員が曲の内容に沿った解説を披露した=県立人と自然の博物館
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標本が並ぶ会場で、三橋弘宗主任研究員が曲の内容に沿った解説を披露した=県立人と自然の博物館

 ピアノ演奏に合わせ、研究員が自然科学の視点から解説を添えるイベント「奏でるミュージアム」が、兵庫県三田市弥生が丘6の「県立人と自然の博物館」(ひとはく)で開かれた。市民ら約50人が参加。恐竜映画のテーマ曲が流れた後には進化の過程に関する研究、人気アニメの主題歌が響けばアニメの設定と関連付けた生物の仕組み、といった具合に興味深い逸話が紹介され、参加者は夢中で耳を傾けた。(小森有喜)

 博物館の標本や研究内容に気軽に接してもらおうと、初めて企画された。幼少期から長くフラワータウンで過ごし、ひとはくにも何度も足を運んだというピアニストミチコさん(37)=神戸市=が出演。三橋弘宗主任研究員(51)=生態学=が解説した。

 会場は、10月にオープンした標本の新収蔵庫棟「コレクショナリウム」。地元の子どもたちが草花や昆虫のイラストを描いたピアノを使い計8曲を演奏した。1曲弾き終わるごとに三橋さんがミチコさんと掛け合いをしながら、研究に関するエピソードなどを紹介した。曲と三橋さんの解説は次の通り。

 ♪Official髭男dism「アポトーシス」

 「アポトーシス」とは細胞が自ら死滅することです。構成している組織をより良い状態に保つため、細胞自体にもともと機能としてプログラムされています。「細胞が自殺するなんて怖い」と思うかもしれませんが、アポトーシスを繰り返して環境に適応した細胞が残ることが生物の進化に欠かせません。

 例えば、オタマジャクシがカエルになる時に尾が消失するのも、アポトーシスが関係しているんです。この曲の歌詞は「死」という言葉を使わず、こういった仕組みを上手に表現しているなと思います。

 余談ですが、アニメ「名探偵コナン」に出てくる、飲むと体が小さくなってしまう架空の毒薬の名前は「APTX(アポトキシン)4869」。細胞を殺して若返らせる、ということなのでしょう。

 ♪LiSA「紅蓮華(ぐれんげ)」「炎(ほむら)」(アニメ「鬼滅(きめつ)の刃」より)

 アニメに登場する敵役の「鬼」は、体を傷つけたり切ったりしても、驚異的な再生能力ですぐに修復します。切っても切れない、というポイントから連想するのは「プラナリア」ですね。神戸の理化学研究所でも大量にプラナリアを飼っていて、細胞の再生に関する研究に生かされているほどです。

 でもこのプラナリアも切る場所によっては再生できません。「鬼」も同様で、「頸(くび)」を切ると再生できない。こうした知識をベースにして物語の設定を決めたのではないかと私は思っているのですが、いつか作者に尋ねてみたいものです。

 また、再生に関連するトピックでは最近、外来水草「ナガエツルノゲイトウ」が問題になっています。県内では淡路島や東播磨、神戸市西区などに分布しており、ただの草だと思って刈ってそのままにしておくと、大繁殖して倍に増えてしまうんです。農業に深刻な影響を与えています。

 ♪映画「ジュラシック・パーク」テーマ曲

 今年のノーベル生理学・医学賞の受賞者は、人類学にDNA解析の手法を取り入れたスバンテ・ペーボ博士でした。太古の人類の骨からDNAを採取するという革命的な技術を開発したのです。恐竜の骨にも今後応用されていくとみられ、骨の形を見て推測するしかなかった進化の過程がより正確に分かるようになる可能性があります。

 ジュラシック・パークの映画は、恐竜の血を吸った蚊の化石からDNAを取り出し、それを使って現代に恐竜をよみがえらせるという話でしたが、そんな世界に少し近づいたかもしれません。

 何より、標本を大切に残しておくと、後世に新たな技術が生まれ、今まで分からなかったことが分かるようになるといういい例だと思います。このコレクショナリウムにある標本たちも、いつかものすごい発見に生かされるかもしれませんね。

◇   ◇

 多くの人が知る曲にひとはくなどの研究を絶妙に絡み合わせた解説は参加者に大好評。武庫小3年の男児(9)は「いろいろなことを音楽を聴きながら楽しく勉強できた」と満足そうに話した。姉で同6年の女児(11)は「切ったら再生する水草の話にびっくりした」。三橋研究員は「関心を持ってもらうための間口を広くすることが博物館の役割。今後も同じようなイベントを企画していきたい」と話した。

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