高齢男性の特殊詐欺被害を防いだとして、兵庫県警三田署は「ローソン三田市相生町店」に署長感謝状を贈った。パート従業員の梶田真由美さん（５１）が詐欺だと気付いた。今回の手口は従来からあるものだが、お年寄りを中心に被害者は減らない。どうすれば詐欺被害に遭わずに済むのか。当時の状況を踏まえながら、梶田さんや同署員にポイントを聞いた。

■高齢者の電子マネー購入には声掛け

　２０２２年１２月６日午後３時ごろ、市内に住む６０代男性がパソコンでインターネット検索をしていたところ、突然画面に「パソコンがウイルスに感染しました」という警告が現れた。男性は問い合わせ先として画面に表示されていた電話番号に連絡。すると男の声で「感染の解除のために手数料が必要。近くのコンビニで電子マネーカード５万円分を買ってください」と指示された。

　男性は詐欺とは疑わないまま、電話を切った後すぐに近くの同店へ。手書きのメモを見ながらレジ前にいた梶田さんに「カードを５万円分買いたい」と伝えた。男性の様子から、「買わないといけないという焦りを感じた」と梶田さん。「詐欺だと思います。購入はやめてください」と説明し、警察に通報するよう勧めた。

　梶田さんは同店で働き始めて７年目。電子マネーカードを介した詐欺被害が相次いでいることから、比較的高齢の人が同カードを買おうとしている時は声をかけるようにしている。これまでの経験から、「１万円以上の購入」を目安に用途を尋ねることにしており、男性から「パソコンのウイルスを解除するために必要」と言われた時点で詐欺だと確信した。

　「本当に必要で購入する人なのかどうか見極めるのは難しい」というが、今回は間違いないと思った。男性ははっとした様子ですぐに応じ、三田署に通報。署員が駆けつけ、被害に遭わずに済んだ。

　今月２０日、同署であった感謝状の贈呈式で梶田さんは「詐欺はあちこちで起きていると思うが、少しでも被害を防ぐことができてよかった」と話した。北尾祐一署長は「地域やお店の方が被害を食い止めてくださることは非常にありがたい」と感謝を述べた。

■三田の被害、７件２９００万円　実態はさらに多い

　三田署によると、２０２２年に把握した特殊詐欺被害は７件で、計約２９００万円が詐取された。ただ、詐欺に遭っても通報しなかったり、県警が認知した場合でも「恥ずかしいから」と被害届を出さない人がいたりするといい、同署は実際の被害はさらに多いとみている。

　以前は言葉巧みに銀行やコンビニのＡＴＭに誘導し、現金を振り込ませる手口が多かったが、最近は現金を受け取る「受け子」が個人宅を訪れて現金やキャッシュカードをだまし取る手法も増えている。

　北尾署長は「詐欺グループはあの手この手を使ってくる。一人でも多くの人に知識と警戒心を持ってほしい」と話した。

【電子マネーカード】アプリやゲーム、音楽などの購入、アプリ内の課金などに使える。カードのスクラッチ部分を削るなどして現れた文字列をスマートフォンなどに入力すると、購入金額分を電子マネーとして利用できる。文字列さえ分かればその場にいない他人でも電子マネーを使うことができるため、お年寄りにカードを買わせた後、電話で文字列を読み上げさせ、電子マネーをだまし取る詐欺が横行している。主なカードには、「Ａｍａｚｏｎギフトカード」「ＡｐｐｌｅＧｉｆｔＣａｒｄ」「ＧｏｏｇｌｅＰｌａｙギフトカード」などがあり、コンビニなどで購入できる。