兵庫県三田市は豊かな自然を生かし、アウトドアを核にしたまちづくりを進める。開設から５０年を超えた市野外活動センター（小柿）は９月で休館し、後継施設について民間企業と協議中。水辺の景観が広がる千丈寺湖周辺でも、民間施設の誘致などで活性化を目指す。４月には庁内の司令塔となる「アウトドア交流推進課」を新設し、組織を横断して魅力発信に取り組む。（土井秀人）

　市野外活動センターは１９７２年に開設し、９０年に全面改築。９８年にバンガローなどを増設したが、老朽化が課題となっていた。

　現在は指定管理者に運営を委託しているが、市の担当者は「既存の施設のままでは限界がある。民間の力で新たな施設にしてもらいたい」とする。そのため、昨年８月に新施設を整備・運営する事業者を公募した。

　土地は賃貸借▽既存建物の利活用は事業者の判断に委ねる▽建物の解体や新築は事業者負担－などの条件を挙げ、応募のあった５事業者の中からネイチャーライブ（大阪市）を優先交渉権者に選んだ。現在は事業実施に向けて調整しており、まとまれば１０月末にも基本協定を締結。その後、野外活動センターを廃止する手続きを取った上で、２０２５年夏頃に新たな施設のオープンを目指すという。

　ネイチャーライブは、マーケティング会社「刀」（大阪市）の子会社で、２０年に設立。刀はユニバーサル・スタジオ・ジャパン（ＵＳＪ）を再建した森岡毅氏が率い、ネスタリゾート神戸（三木市）の再生を手がけるなど、集客施設づくりに実績がある。アウトドア分野を担うネイチャーライブは、今年５月に神戸市の六甲山で第１号となるグランピング施設「ネイチャーライブ六甲」を開業する。

　三田市でもグランピング施設を展開する。市の公募には「プレミアム＆オーセンティックな真のアウトドア体験」をコンセプトに、星空に包まれながら眠れる独自開発のキャビン建設や、三田市の食材を使った食体験などを提案した。

　ネイチャーライブの担当者は「初心者でもプロ並みのアウトドア料理を自分で作って食べられるという、『食体験』に特化したグランピングを展開する予定。持続可能な事業にして地域活性化に貢献していきたい」と話す。

　市の担当者も「施設の老朽化に市で対応するには財政面の負担が大きい。また、市単独では時代に合った施設をつくるのは難しく、民間と力を合わせたい」としている。

　■民間と協業、千丈寺湖畔の魅力も発信へ

　三田市は４月に「アウトドア交流推進課」を発足させた。課長を含めた３人体制で庁内の旗振り役となって市野外活動センターの再整備や千丈寺湖畔の活性化に取り組む。

　市がアウトドア施策を積極的に推進するのは、２０２５年の大阪・関西万博が視野にある。

　会期中に県内で展開する体験型観光事業「ひょうごフィールドパビリオン」に応募し、千丈寺湖周辺の自然や施設を生かしたプログラム「シン・センジョウジコ～『里』・『水』・『風』の恵みがもてなすアウトドア交流都市さんだ」が認定された。

　市民の上水源として整備された青野ダム（三田市末）の貯水池、千丈寺湖周辺は公園が広がり、ピクニックや散策、デイキャンプなどを楽しむ人も多い。だが、同課の山谷聡課長は「ニーズはあるはずだが、十分に魅力を発信できていない」とする。

　さらなる活性化への可能性を探るため、民間企業などに「湖畔で何ができるか」「行政のどんな支援が必要か」といった意向を聞き取る「サウンディング調査」を実施する。アウトドア施設の誘致も検討しているといい、「市は場を提供する形で、民間が独立採算でやっていく形を目指す。事業として成り立つのかを見極めたい」とする。調査は２３年度中に行い、コンサルタント会社に業務委託するための１千万円を予算に計上している。

　山谷課長は「万博をきっかけにして三田の魅力を知ってもらいたい。地域の資源を生かし、一帯のにぎわいづくりを目指したい」とする。（土井秀人）