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 ようやく重い扉が開いた-。11月2日、柔道部顧問の男(50)が傷害罪で起訴されると「全国柔道事故被害者の会」前事務局長、小林恵子さん(71)は深くうなずいた。「学校の道場で柔道技を使い、傷害罪で起訴されたのは初めてです」

 16年前の憤りがよみがえった。2004年、小林さんの三男は横浜市立中学校の柔道部員だった。高校へのスポーツ推薦を断ると、顧問から稽古に呼ばれ、一方的に投げ技や絞め技を繰り出される。意識を失い、急性硬膜下血腫や脳挫傷で、重い障害が残った。

 顧問は傷害罪で書類送検されるも不起訴に。道場での柔道技は指導と犯罪の線引きが難しいとされた。検察審査会が不起訴不当を議決しても覆らなかった。小林さんは「練習を隠れみのにした暴力は犯罪だと、やっと認める社会になってきた」と語る。異例の起訴、そして異例の懲戒免職。教員暴力への厳罰を示した。

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 ただ、指導と称した暴力にどれだけの人が声を上げられる社会になったのか。

 19年4月、尼崎市立高校のバレーボール部顧問が激しいビンタで部員の鼓膜を破り、失神させた問題が匿名の通報で発覚し、市教育委員会がアンケートをした。校内で体罰を経験したという生徒は34人に上り、市立の全学校園で348人の児童生徒が過去6年間に受けたことがあると答えた。

 今回の事件でも被害者の家族は顧問の報復を恐れ、悩んだ末に警察へ届けた。一方で神戸新聞社が1486人に聞いたアンケートでは4割が体罰を「必要」「ある程度は必要」とした。

 「サル以下」「能なし」。西宮市の20代男性は高校サッカー部でミスをするたびに顧問に罵倒されて延々と走らされ、うつ病で休校した経験を今、「ストレスに耐える力は育ててもらったかもしれない」と話す。明石市の40代男性も高校柔道部で数十回ビンタされても「気の緩みに気付かせてくれたと思える」とした。

 暴力を我慢し、容認する人がいる。教員に愛情があれば許せるとの意見も目立った。表面化するのは、氷山の一角の可能性がある。

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 起訴から半月が過ぎた11月24日。兵庫県教委は柔道部顧問の男に直接、懲戒免職を伝え、宝塚市教育長に「再発防止策の報告を」と告げた。教育行政の大半の権限が市町教委にある中、これも異例の要請だった。

 市教委は今年8月、部活動の厳しい指導がもとで市立中学校の女子生徒が校舎から転落して重傷を負った事故を受け、顧問を停職1カ月とした県教委の処分が軽すぎるとして、体罰の処分基準を見直すよう要望していた。しかし今回、足元で再び起きた体罰に、組織の責任を問われた格好だ。

 中川智子市長は会見で「懲戒免職は当然。重く受け止める。わいせつは即免職になるのに、これまで体罰には甘かった」と語り、市民にこう呼び掛けた。

 「表に出してほしい。すべての大人が『暴力は許さない』という意識で臨まないと、根絶できない」

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