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在留期限が切れた後、ベトナム人男性が身を寄せたアパートの玄関=4月、兵庫県内
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在留期限が切れた後、ベトナム人男性が身を寄せたアパートの玄関=4月、兵庫県内
ベトナムへの強制送還のため、元技能実習生の男性は荷造りを急いでいた=4月、兵庫県内
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ベトナムへの強制送還のため、元技能実習生の男性は荷造りを急いでいた=4月、兵庫県内

 神戸地裁で4月、入管難民法違反の有罪判決を受けた元技能実習生のベトナム人男性(21)。来日は2018年の夏。故郷でファストフードの店を開く資金をためるためだった。

 日本に抱いていたイメージは「仕事は真面目。ちゃんと仕事やります。みんな優しい」。降り立った成田空港で建物の清潔さに驚いた。「びっくりしたな。わあー、日本きれいな」

 男性が弁護士に語ったところによると、地元では「日本に行った子どもが大金を仕送りしてくれる」と話題だった。実習生の失踪は日本で社会問題になっているが、現地では広まっていなかったらしい。男性も、自分が逮捕されたことは両親に言っていなかった。

 技能実習の受け入れ先は関東にある建設関係の企業だった。工事の掘削作業を任された。朝5時ごろに起床し、東京の現場で夜7時ごろまで働いた。家賃を払うと手元には毎月10~12万円が残った。食費を抑えれば、借金返済と貯金ができるはずの金額だった。

 ただ、最初の日本のイメージとは違う出来事もあった。「日本語も仕事も全部分からない。頭たたかれ、肩を殴られた。水も掛けられた。ホースで。仕事で急いでいる時ね。日本人の先輩。僕のこと好きじゃないから、殴る時は強い」。暴力は1週間に数回。半年ほど続いたという。

 来日から1年以上が過ぎた19年11月、男性は周囲に黙って逃げ出した。同じ現場にベトナム人はおらず、誰にも相談しなかった。在留期限はまだ先だが、借金すら返済できていない。来日前の日本語学校が同じだったベトナム人の家に身を寄せ、約1カ月後、会員制交流サイト(SNS)で新しい仕事を見つけた。まだコロナ禍の前だった。

 「コロナで仕事がなくなった。在留資格も切れる。助けて」。兵庫県にいる留学生の姉に助けを求めたのは、昨年6月。初の緊急事態宣言が解除された後だった。7月上旬に姉のアパートに転がり込み、数日後に在留資格がなくなった。「コロナでベトナムに帰る飛行機がなかった」「出頭して逮捕されるのが怖かった」。公判で男性はこう語った。

 男性は、兵庫で再び職を探す。公判によると、男性は昨年12月、SNS上で接触したベトナム人を名乗る人物から、野菜の仕分け作業員の仕事を紹介された。不法残留のため別人の名前を名乗るよう指示され、他人名義の在留カードとキャッシュカードを郵送で受け取った。だが口座は既に凍結されていた。約1カ月後、金融機関で給料を引き出そうとして警察に通報された。

 弁護士は「姉に金銭的負担を掛けたくなかったようだ。他に犯罪はせず、真面目に働いていた」と指摘。判決後は事務所まであいさつに来たといい、「国選弁護人にそこまでするのは日本人でも珍しい。礼儀正しい好青年だ」と話す。

 男性には来日前の借金が7万円ほど残っている。ベトナムに送還される航空機代の約10万円は、実習生の友達から借りた。帰国後は親の店を手伝うが、夢は変わらず自身の店を持つことという。「あと2年は日本におりたい。給料高い。でも無理」。そう言って男性は天を仰いだ。マスクに隠されているが、自虐的な笑みを浮かべていた。

 「ああー、僕、日本で何もしてないよ。お金もないね」

 取材翌日の夜、男性は出国のため、車で関東に向かった。車内には同じく送還されるベトナム人たちがいた。皆が良い暮らしを夢見ていた。多分、今も-。

 日本の外国人労働者約170万人に占めるベトナム国籍の人は、最多の約44万人。入管難民法違反容疑の摘発は増え続ける。男性も、統計の「検挙人数」に加えられるだろう。(那谷享平)

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