神戸市立王子動物園(同市灘区)のジャイアントパンダの雌「タンタン(旦旦)」の中国への返還が発表されてから19日で1年。この間、同園と中国側で、返還に向けた具体的な協議が一度も行われていないことが分かった。昨年7月に返還期限を迎えたが、新型コロナウイルス禍で帰国できず、今年4月には加齢による心臓疾患も判明。「神戸のアイドル」の処遇が宙に浮いたままとなっている。
タンタンは2000年7月、飼育繁殖研究などの目的で来園。2代目コウコウ(興興)が10年に急死してからは同園唯一のパンダとなった。同園は中国側に貸与延長を求めたがかなわず、昨年5月に返還方針を発表した。
発表に先立ち、同園はタンタンの負担軽減のため、返還先の四川省に関西空港を結ぶ直行便での移送を相談し合意。しかし発表後は「現地への直行便の運航が再開されず、全く話が進んでいない」(同園)という。昨年末に運航が再開する情報もあったというが、実際は再開されなかった。
タンタンは25歳で、人間の70代に相当。今年に入って不整脈が判明した後、心臓疾患と診断され、現在は投薬治療を受けている。長距離移動による体調への影響を懸念する声もある。同園は現在、緊急事態宣言発令を受け休園している。
またタンタンの借り受けに当たり、同園は保護資金の名目で中国側に年間25万米ドル(約2700万円)を支払う契約だが、昨年7月の期限満了後は、日割り計算で払うことになっているという。(初鹿野俊)