前後に車輪が付いた板の上に両足を乗せ、ハンドルのアクセルで加速する電動キックボード。ちょっとした移動の足として海外で普及している。そんな中、神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に、「電動キックボードは無免許でも乗れますか？」という質問が寄せられた。答えは「今は乗れません」。無免許運転などの摘発が相次ぐ一方、規制緩和に向けた実証実験が展開されている。（金　慶順）

　現状、電動キックボードは道交法、道路運送車両法上の原動機付き自転車（原付）に分類されている。兵庫県警交通企画課は「公道を走るには原付免許やナンバープレート、ヘルメットが必要」と説明。バックミラーやウインカー、前照灯なども必須で、歩道でなく車道を走る。

　今月１４日には、大阪市内の歩道で電動キックボードを無免許運転したとして、大阪府警が男性を書類送検した。ナンバーやミラーもなかったという。府警では５月にひき逃げ容疑、６月１８日には酒気帯び容疑と電動キックボード運転者の摘発が続く。

　折りたたんで持ち運べることなどから、駅から目的地までの「ラストワンマイル」の移動手段として期待される一方、ヘルメットや免許が必要なことなどが足かせになり、国内ではあまり普及が進んでいない。

　そのため事業者でつくる「マイクロモビリティ推進協議会」（東京）は、規制緩和に向けた特例措置を国に要望。今春、実証実験計画が認められた。

　同県豊岡市の城崎温泉街。今月初めから、電動キックボードに乗って移動する市民や観光客の姿がある。ヘルメットは着けていない。市と芸術文化観光専門職大学、事業者の連携による実証実験だ。

　指定業者の製品を一定の条件で使う場合に限り、道交法上の扱いを「小型特殊自動車」とし、ヘルメットは任意、自転車専用レーンなども走れるようにした。速度制限は時速１５キロ。東京や大阪などに加え、豊岡市もエリアに含まれた。

　豊岡では、城崎温泉駅前にボード８台を設置。事前にラインアプリでユーザー登録する。ロック解除や決済もアプリで行い、１時間１６００円だ。市の担当者は「温泉街から円山川までなど、徒歩では遠いが自然豊かな場所も散策してもらえたら」と期待する。

　神戸市も本年度、実証実験に向けて事業者と調整中だ。昨年１１月～今年３月は、市職員に限り、三宮の限られたルートで実施。ヘルメットの着用義務はあったが、特例として自転車専用レーンを通行できた。利用者からは「自転車のイメージに近い」「車道を走るときは安全面の配慮が必要」などの意見が寄せられたという。

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■「時速１５キロ以下なら不要」検討　警察庁有識者会議

　警察庁の有識者検討会は４月、小型電動モビリティー（乗り物）の新たな交通ルール案として「時速１５キロ以下の電動キックボードは運転免許不要」などとする中間報告をまとめた。検討が進めば、一定速度以下の電動キックボードは免許やヘルメットなしで走行できるようになる可能性がある。

　中間報告は、移動支援ロボットや電動車いすなど、最高速度が時速６キロ以下の「歩道通行車」は歩道や路側帯を通行できるとする。時速１５キロ以下の電動キックボードは「小型低速車」とし、免許不要、ヘルメット着用は努力義務で、車道や路側帯を走れる。時速１５キロ超は原動機付き自転車と同じ扱いを継続する。

　一方で、安全性について懸念の声も。大阪市内の繁華街で今年５月、電動キックボードで女性にぶつかって重傷を負わせ、立ち去ったとして、大阪府警はひき逃げなどの疑いで男を逮捕した。ヘルメットをかぶらず、ナンバープレートもなかったという。

　兵庫県警交通企画課によると、電動キックボードが絡んだ事故は、県内では近年把握していないという。「ルールに従って十分に注意して乗ってほしい」と呼び掛けている。（金　慶順）

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