南海トラフ地震の発生で最大8・1メートルの津波の到来が想定される兵庫県南あわじ市の福良湾で、総事業費111億円に上る巨大防波堤の工事が進んでいる。県が津波から住民の命を守ろうと計画したが、漁業や観光業など防波堤に守られる人々の営みは人口減少や高齢化に、コロナ禍が重なって揺らいでいる。7月1日に告示される兵庫県知事選を前に、津波防災の町を歩いた。
県最南端。緊急事態宣言下だった5月下旬、例年なら観光客でにぎわう福良湾に人影はほとんどなかった。
サワラ漁を営む漁師の男性(85)は「魚は捕れても値段はさっぱり。防波堤工事を船で見回る日当で食いつなぐ漁師もいる」とつぶやいた。
南海トラフ地震で県内最大の津波が想定される福良地区で巨大防波堤の整備が決まったのは2014年。湾にふたをするように、海面から高さ5・9メートルの堤防を整備する。
17年末に工事が始まり、全長1・1キロのうち770メートルが完成した。
今後は水門の工事に入る。さおを立てて走るサワラ漁船が出入りできる特殊な水門は全国2基目となる最新式で、費用は約23億円。「淡路島3年とらふぐ」など養殖が盛んな湾内の海水を循環させるために通水門も増やす。当初60億円とされた湾口防波堤の総事業費は2倍近くに膨れ上がった。
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23年度に防波堤の整備が終われば、100年に1度程度発生するマグニチュード(M)8・4クラスの地震が起こす津波で、人口が約5千人の福良地区の浸水面積を6割減らし、人家の浸水深を1メートル未満にできる。ただ、千年に1度程度とされる最大クラス(M9・0)の地震による津波では、地区内の多くが1~3メートル浸水するため、今後も住民の避難訓練は欠かせない。
東日本大震災から10年がたった今も、福良地区の住民の多くが津波への危機感を抱く。サワラ漁師の男性も10歳で昭和南海地震(1946年)を経験した。「津波の恐ろしさは底知れない。防波堤ができれば少しは安心だが、それを越えたら逃げるしかない」と話す。
ただ、南海トラフ地震以上に漁師らを悩ませるのは、長引くコロナ禍だ。平年なら1キロ2500~3千円で取引されていたサワラは、今年は1キロ200~300円に落ち込んだという。「船の燃料代にもならない。防波堤の工事が終われば漁師をやめる人も出るかもしれん」
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南海トラフ地震対策で、兵庫県は総額約640億円の事業費をかけ、2013~23年度、尼崎市や西宮市、姫路市などで防潮堤や防波堤を整備する。19年度からは総事業費約56億円を見込んで、日本海側の津波対策にも取り組む。
その一方で、県が津波の被害想定を公表した後、福良地区では結婚などを機に他地域に移り住む若者が増え、“震災前過疎”が進んだ。福良地区の人口は、この10年間で17%減少。高齢化率は10ポイント以上も上昇し45・1%にもなった。
県知事選の立候補予定者はいずれも防災への取り組みを公約に掲げる。インフラ整備とともに、人々の暮らしを持続させる施策がなければ、「危険」とされた地域はさらに厳しい状況に追い込まれる。(高田康夫)
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