上方落語界の大御所・桂文珍による独演会が8月8日、大阪市中央区のなんばグランド花月である。末広がりの「八」が並ぶ同日に吉例として毎年開催し、「あっという間」(文珍)の39回目。今年は兄弟子の六代目桂文枝をこの独演会では初めてゲストに迎えた。自身と重なる浄瑠璃好きが主人公の「軒付け」など古典2作でコロナ禍の閉塞感を晴らしたいという。
文珍は1948年、現在の兵庫県丹波篠山市生まれ。69年の大学在学中に先代の五代目故桂文枝に入門し、古典に加え新作も評価が高い。時代を切り取るセンスも鋭く、神戸新聞の「落語的見聞録」で健筆を振るう。
「軒付け」は浄瑠璃が好きだが下手な連中が集まり、他人に聴かせようとし、さまざまな失敗を起こす。文珍は文楽の人間国宝・豊竹咲太夫に浄瑠璃を教わった。「ひいばあさんも浄瑠璃好きで、その遺伝子の影響かな」とした上で、「軒付けの登場人物の人間っぽい、面白い面を出したい」と意気込む。
もう一作の「たちきれ」は、若旦那に恋い焦がれた芸者の悲劇を描く。色気のある女性を得意とした師匠もよく演じており、「上方落語では珍しい純愛もので、『いいなあ』と選んだ。師匠の世界には及ばないが、私なりの色で次世代に渡したい」と狙いを語る。
六代目文枝のゲストについては「師匠に私を紹介してもらった恩人。2人でお客さんがマスクの中でも口角が上がるような笑いの場にしたい」と文珍。
午後6時開演。4500円。FANYチケットTEL0570・550・100。
(金井恒幸)